2015年12月28日月曜日

すばらしき小坂の氷瀑たち

天気は晴れ。おまけに冷え込みが激しい。こんな日はサイコーの氷瀑日和。
てなわけで今日は濁河へツアーの下見と称して気分転換に行ってきました。
今年は暖冬の影響もあってか昨年の今頃と比べるとずいぶん温かい(日中マイナスにならない)
そして積雪も半分以下の30cm程度。今年は僕が経験した中で最も雪が少なく氷も痩せている冬だ。
まぁここからどんな風に変化するかは予想するだけ時間の無駄なくらい神様のみぞ知る事。
「こんな年もあるさ。」って思う反面「こんな年がこれからも繰り返し頻度を上げてやってくるかも」って思うほうが大きくなる。自然を相手にする仕事なだけに心配はつきません。
きっと氷瀑もなが~い目で見たら”もう見られない”絶景なのかもしれませんね。
てなわけで温暖化に覆いかぶされる前にできるだけ僕はこの目で、この体で小坂の氷瀧(ひょうばく)に相対したいと思う訳です。
 2月の千畳の滝は威風堂々たる完全氷結。深山の盟主たる存在感。
アプローチがとても長く好条に恵まれないと日帰りでは拝めない。
(この日も相当な好条件で往復9時間だった)
 まさかこんなところに!というのがこの50mはゆうにあるだろう巨大な氷瀑。
実はこれは県道から水平距離で100m足らず。
でもとっても危険なトラバースがつきものなのが難点。
そして極めつけはこれ。巾30mはあろうかというワイドな氷瀑。
色々見てきたけどこれほど見事な氷瀑は小坂にはここしかない(いまのところ)

夏には全く気にしないような枯れ滝や零れ滝が冬には信じられないほど見事な氷瀑になるのが常。
滝という感覚ではなくちょっと視点を変えると新たな発見に出会える。この発見が開館なんですよね~。だからやめられない。春夏秋冬小坂で滝めぐり。やっぱりこれが僕のライフワークだな。

2015年12月23日水曜日

小坂の瀧を考える その1

来年は小坂の将来、いいかえれば自分の将来のひとつの節目になるだろう。最近そんな”潮流”を感じる。僕たちの生きている現在進行形のこの世、平和な世の中だと思う反面すさまじい速さで変化していくある意味”乱世”ともいえる世の中。そんな中、小坂の瀧の存在価値(Value)とは何なのかも一度原点に立ち返って考えてみる必要がある。ちなみにこのブログを始めた時に僕自身のVisionやValueについては触れている。今もそう思って行動している(つもり)”小坂の瀧魂最初の最初の一滴”でもそもそも小坂の瀧そのものはこの世の中の人々からどんな風にみられているのか。何を求められているのか自分なりに考える。

そもそも滝を含め森も川も全部ひっくるめて”自然”はものを言わない。だからどう思っているのかはわからない。でも人間や動物たちはそれによって生かされ、時には殺されたりする。当たり前やけど感情も無いでしょうきっと。それを感じるとしてもきっとそれは人間側の感じ方ひとつ。自然はどこからどこまで行っても自然である・・・。

つまり自然に触れる人の感じ方。それがポイントなんやろうな。たとえば自分はどうやろうか。自然の中に身を置いたときに感じること。

例えば溶岩台地の森ではいつも”安心感”やだったり”やすらぎ”を頂く。

一方、袴滝では気高さを感じ自然の奥深さから”恐怖”だったり”畏敬”だったりを感じる。

さらに、しょうけ滝のゴルジュでは窮地に追いやられた時の”不安”だったりそこを越えようという”高揚感”だったり対峙する自然環境の質によって感じ方が大きく違う事に気づかされる。


じゃあどうしてそこに行こうと思うのか、なぜそれを求めるのか・・・。

「好きだから」と言ってしまえばシンプル。きっと僕は単純にそうなんだと思う。でも人間の思考回路は複雑できっとそこに行きつくまでには色々な体験から紐づけられたあみだくじを引いたような必然的GOALであって末端まで行くとすごい沢山の因子があるんだと思う。結局行きつく先が自然が好き、瀧が好きとなっているだけなんでしょうね。

ではその自然の中でもなぜ小坂の瀧を選ぶのか。

これまた自分の場合はそこが好きだから。愛着があるからでしょうね。単純明快です。
でも自分以外の人はどうか、この町に住んでいる人の中でも僕と同じじゃない人は沢山いるだろう。その人たちにとってこの小坂の瀧とは何の接点があってどんな存在価値があるんだろうか。

生活に直結していないものに感心はあまりないのかもしれない。そのような人には現段階での価値はあまりないのかもしれない。ただし内外の人を含めてそれを求める人たちはどんあだろう。

実際に過去に案内をしてきたお客さんの事を思い出す。彼らがツアーの終わりに見せるあの満足げな顔。リフレッシュできた!っていう人、また来たいな~っていう人、色々いたな。みんなすっきりした顔をして帰っていくような気がする。その中でも印象的なお客さんで「心の垢までも洗い落とせた気がする」という言葉を残した人がいる。それかもね、もしかしたら。


きっと人間生活をしている限り何かしら垢がつくんでしょう。それはストレスであったりしがらみであったり・・・。とにかくスッキリしたい!そんな時にこの瀧という強力水流パワーが最適なんでしょう。そう考えます。

じゃあなぜ沢山ある滝の中でここ小坂である必要性は何なのか。
それはきっと近場だったとか、高山に行くついでだったとか、滝マニアだったりとか色んな背景の人がちゃんと理由を持って選んできているはず。

でも中には何も知らずにふらりと立ち寄る人や友達にそそのかされてきた人なんかもいるから前情報ゼロなんて人もいるでしょう。そんな人たちはきまって「知らなかったけどいいところだね」とか「もっと宣伝しなきゃ」とか言ってくれる。ごもっとも。きっと彼らに正しく情報が伝わっていないんでしょう。いやまったく届いてもいないのかも。

う~んいっろいろ考えを巡らせるうちにとっ散らかってきたので一旦まとめ。

小坂の瀧のValueは”スッキリさせるパワー”だと思う。だからこそスッキリしたい人にこのスッキリパワーを届けたい。そのために僕にできること、次はここを突き詰めていこう。とりあえず今日はここまで!



2015年12月20日日曜日

大しめ縄

今年も残すところあとわずか。一年のしめくくりと来年への期待をこめて毎年恒例しめ縄づくり。
三ツ滝に渡すためには12m程度の長さが必要。素材は毎年ヤマピが提供してくれる。それをみんなでさばいたり、たたいたりと一通りの下ごしらえをしたものを先輩ガイドのみなさんの熟練の技術でねじ込み編み込んでいく。まさに小坂の瀧魂満点なしめ縄なのです。今年も無事掛けることができました。やっとこれで年が越せるな~。
幣束も取り付けたり装飾も忘れずね

ロープにくくりつけ渡します
ただ心配なのは今年は暖冬。雪が降らんと年は越せても仕事がな~い!死活問題です。
フィールドの調査もかねてしめ縄づくりの後は鈴蘭へGO.うっすら雪でした。昨年と比べるとマイナス30cmくらいかな~。年明けに期待です。
いっぱい積もりますように!

2015年12月15日火曜日

近所の散歩

今年は暖冬!ということで普段は雪や氷に閉ざされて、といってもまだまだ中途半端な季節なのが常ですが今年のコンディションは例年の11月中旬並み。雪や氷はどこえやら・・・。
急きょ時間が空いたので視察と銘打ってふらっと近所をドライブ&散歩してきました。
 まず手始めに白草山登山。ガイドのお師匠さんで岩佐さんと話している中で話題に上り「最近登ってないな~」と思っていたところ。天気も良くないが取りあえず最近の運動不足解消にはうってつけな場所だな。ということでサクッと散歩。標高1640m。ガスってますけど。地図とコンパスを頼りに「あそこが御嶽で、あそこが木曽駒で・・・。」もちろん見えないので妄想ですけどね。往復約8km・2時間弱で駆け抜ける。久々に良い運動になった。トレーニングもさることながら学校登山の練習にも良いぞ、とか地図読みの初級トレーニングにもいいな、残雪期の入門にもよさそうなどなど・・・。やっぱり商売につなげる事を考えちゃいます。今後季節を変えて頻繁にリサーチしてみよう。
 下山し帰路にて存在は知っていたがなかなか訪れる機会が無かった乗政大滝(21m)へ立ち寄り。独特の岩の質感とコバルトブルーの水が神秘的。結構迫力あっていい感じです。駐車場から片道5分てのもお手軽でいいですね。ただ岩質は脆いうえかなり浸食の激しい地形だけに落石の危険が際立って高い。気軽に立ち寄ることが出来るだけにかなり注意したほうが良い。
 今日は御嶽山の南側をぐるっと回ろう!とざっくり予定していたので中津川へ下り19号をノープランで北上する事に。途中馬篭宿の看板に吸い込まれ山道をひた走る。最近外国人が急増したという馬篭。きっと平日は高山のように外国人でごった返しているんだろう!そんな妄想をしながらたどり着くと外国人どころか日本人もいやしません。う~ん。でも初めての馬篭。なかなか新鮮でした。
のれんにGUEST HOUSEなんて書いてあるところもありました。Booking.comの営業の人が今岐阜県で一番フィーバーしているといっただけにリサーチかたがたこの民宿に一度泊まってみようかな・・・。
なおも19号を北上する。ここでもひらめき木曾の小黒部と名高い柿其渓谷へ。花崗岩質の素敵なロケーション。この岩質の水系は水がとにかくキレイ!笛吹川東沢や西沢のように美しい。
今回は遊歩道をダッシュして牛が滝を上から観瀑。キャニオニングやったら絶対おもしろそう!せめてみたいないつかは。しかし御嶽南面にある小秀・奥山界山域にはまだまだ何かありそうだな。重点課題としよう。沢も2~3級そこそこのものが散見できるので期待ができる!





ということでうちの近所の散歩は見どころ沢山でまだまだ知らないことだらけだ。
将来的には環御嶽をフィールドにガイドの幅を広げて活動したいと思っているだけに近所のこともろくに知らないな~と痛感。時間を見つけてまたリサーチせねば。いやリフレッシュか(笑)







2015年12月10日木曜日

トレーニング


毎年恒例とばっている元旦のイベント・がんだて詣で。目玉(?)は三ツ滝2段目にかかる大しめ縄。大きな注連縄を張るためには①注連縄を作る。②張るためのロープを渡す。というアクションが必要です。例年滝の落ち口に二段梯子を横にしてその上を渡るというけっこうスリリングな作業をしていました。これはこれで面白いけど今年は上から攻めてみる事に。

てなわけでまずはやっさんが三ツ滝二段目に降り立つべく、左岸の林道よ支点をガードレールの支柱に取り高低差約12m懸垂下降で降り立つ。降り立ったことを確認し僕は右岸へ遊歩道を使って移動。やっさんが投げたロープをキャッチしアンカーに結ぶ。こうして無事ガイドロープを設置完了したのであった。あっさり。

さて、今日のミッションは左岸の支点を確認し右岸にロープを渡すこと。つまり一人が左岸に降りたち一人は右岸で待つというスタイルで”作業”は完了した。でもせっかくのロケーション・シチュエーション。ここからは”トレーニング”も兼ねて懸垂&のぼり返しを僕もやる事に。2往復くらいしたらよかったけど時間の都合上1度だけ。トレーニングというよりかはリフレッシュ?でした。おかげで三ツ滝の美しいエメラルドグリーンにも出合う事が出来たし良しとしよう。

田舎の山村に居ながら車で5分圏内に色々なフィールドがあるのは本当に助かる。地の利に感謝!

美しき世界へようこそ。

2015年12月8日火曜日

気が付けば師走

気が付けば11月が終わっていた!というわけで約1っヵ月ぶりの更新です。サボっていたわけではありません。いや結局はサボっていたに過ぎないのか・・・。

というわけで気を取り直して。さぁ2015もあとわずか!終わりが見えるとなんとなく焦るものですね。夏休みの終わりに宿題を終わらせなければならないあのプレッシャーと同じように僕自身色々と追いつめられてきました。

11月から現在に至るまで、今までやらずにいたことに意を決して”挑戦した”または”挑戦しようとしている”状況です。全ては未来の設計図の一部分。大事な大事な通過点たち。

12月は本業のガイド業が完全STOP!体は”なまる”一方です。反面頭脳はフル稼働。
冬の企画もそこそこに来夏以降のことに思いをはせている今日この頃。

まずは冬を楽しまないとね!これからのツアー予定はこちら
→http://www.osaka-taki.com/tour_info/index.html

冬の袴滝。たまらんな~。



2015年11月4日水曜日

久しぶりの谷

先日今シーズン最後の根尾の滝巡礼へ行ってきました。
今回は滝壺ではなく上流の世界へ。今回は滝友会のみなさんと4名パーティーで賑やかな遡行。アプローチは根尾滝へ続く遊歩道をはずれ森林鉄道軌道敷のトロッコ道へ。ところどころ崩落はしているがなんとか歩ける。そんなことよりも道中ずーっと紅葉がキレイ!こんなにカエデの赤色が映える年は近年記憶にないなぁ。紅葉の美しさに気をとられ&足をとられなかなか前進できない。入渓の頃にはだいぶ日が高く登っていて狭い谷底にも光が差し込んでいた。でも気温は低いしこのごに及んでも沢登って気分にはなれない。てなわけで冷たい水とツルツルの溶岩の壁のヘツリをヒヤヒヤしながら落ち口へ向かう。落ち口からは紅葉がこれまた美しく観察できてた。今日はほんとに紅葉狩り気分だな。
落ち口からの紅葉


昼食にはくみ長さんが”生食パン”サンドイッチを振舞ってくれた。初めて食べたけど絶品!超厚切りで腹持ちも良くてグッド。これから外メシには生食パンがラインナップに加わりそうだ。(高価ですけどね)午後からは濁河川を遡行し今回の目的地”馬の鞍滝”を目指す。秋特有のぬめぬめ河床、ツルツルに磨かれた側壁は相変わらず続いておりドボンに注意しながら慎重に進む。しかし結果的には往復行程で2名ドボン。やはりこの時期の遡行はあまり快適ではない。
馬の鞍滝までもう少しというところで両岸迫ってゴルジュが出現。「あっそうだった」すっかり忘れてました。これの存在。胸までつかっての突破は可能だが時間も時間だし今日はここで終了。右岸の高台まで上がり100m先の馬の鞍滝を遠望し帰路へ着く。このとき14時を過ぎていた。上流に車をデポっていないのでもと来た道をもくもくと下る。帰りに根尾滝の滝壺まで降りたので16折れを登る途中で完全に日没。暗闇の中をひた歩く。ヘッデンを持っているけどしばらくの間暗闇の中わずかに浮かび上がる景色を歩く。
真っ暗な森はなんだか気味悪さより不思議な心地よさがあって悦に入る。野生動物になった気分だ。いかん。新境地を開きそう・・・。

西日に焼ける根尾の滝の側壁


久しぶりに歩く濁河谷本谷はやはりすばらしい谷だった。ただ、がっつり遡行するには大人数&1日では少々ハードかもしれない。また機会をつくってみんなと戻ってこよう。うん、そうしよう。取りあえず今シーズンもありがとう!根尾の滝!!次は冬だね。

2015年10月30日金曜日

伝えたいこと

休みという概念はこの仕事を始めてから無くなっていた。
ツアーがひと段落する秋にはある程度時間に余裕ができ、先日は休日らしい休日を過ごした。
充てられる時間は全て子供のために。これは理解ある嫁さんとの約束でもある。
てなわけで僕の休日はもっぱら子供のためにある。
この日は天気は良くないけど下呂と小坂の町境にある観音峠へ行ってみることに。
自分自身約2年ぶり。いきしにreenhousecoffeではコーヒーを仕入に立ち寄るFBこちら↓。
ゆうくんお勧めのコスタリカコーヒー(ブラックハニー)をチョイス。https://www.facebook.com/coffeemidorinoyakata/?fref=ts
 
 高曇りだけど遠くまで見える。小さいころ親父に連れてこられてから20年くらいたつな~。
名古屋まで見える場所が小坂にあるなんてビックリと小さいながら思ったことを思い出す。
まだ3歳のわが子にはあまり理解できなかったようだが何となく山深いことは伝わったみたい。
 もうひとつ伝えたい事、外で飲むコーヒーはうまい!ということ。
とはいえ子供はもちろんコーヒー飲めないのでピカチュウラーメン。ラーメンもうまいんです!
シングルバーナーで湯を沸かしコッヘルに湯を注ぐだけ。
以前乗鞍に連れて行った時にも暴風のなかラーメンを食べて鼻水を垂らしながら「おいちーね」と言ってほほ笑むわが子。
今日もあい変わらず「おいちーね」3歳にして外メシのうまさを知っています。
観音峠でラーメンと珈琲を満喫し一路帰宅の途へ着く。小坂へと下る道は未舗装のがたがた道。
子供はこんなオフロードが好きなようで終始ご機嫌。小坂の中でもこの鹿山筋谷沿いの紅葉は秀逸で今回は少しピークを外したものの色鮮やかな世界が美しかった。
 
結局休日も小坂で過ごしている。小さな町です。でもいろんな場所や顔があることを僕は知っている。そのすべてを伝える事はできないけど僕の知っている限りの事は伝えたいと思っている。
特に我が子には。彼が好きになるかどうかは分からない。
もしかしたら連れまわし過ぎて嫌いになっちゃうかもしれない。
でも自分がそうであったように幼いころに見た景色・感じた風・においや感覚は全て今の自分を作るベースになっている。
そのベースはやっぱりこの小坂の風土でありそこで積み重ねた経験だ。
こどもにあまり多くは望まない。ただこの小坂でベースを作ってもらいたい。
その土台づくりに必要な情報は伝えたい。
伝えたい事まだまだあります。休日増やさなかんね。

2015年10月28日水曜日

白州・森薫るハイボールの日

今日は夕方より関市にて、みのハイキングクラブさんの定例会で小坂の滝めぐりの紹介をするチャンスを頂きセールスさせて頂きました。てなわけでガイドのみならず出張説明会も随時受付中です!旅費実費負担いただければどこでも参ります。最近ではヤンゴンからのオファーを待っています。

帰り道、月明かりが明るいのに気が付きました。ひと月前だったかな、スーパームーンは。そんなことを考えているとふと「森薫るハイボール・白州」の事が頭をよぎりました。
白州といえば・・・・そうか一か月前の今日は黄連谷遡行してたっけ。ちょうど前夜祭に呑んだ白州ハイボールの薫りが恋しくなっていたころ。

てなわけで家路の途中でコンビニに立ちより晩酌用に白州ハイボールセットを購入。コンビニでも買える思い出。どうなんかな・・・。
家に帰り白州専用ショットグラスでミニマムなハイボールをちびちびやる。「お~これこれ!」と独りほくそ笑む。


グラスを進めるごとに思い出がよみがえってくる。備忘録にも書いていないことをあれこれと思いだした。

出発の準備をしていたら「RUNですか!?」って聞かれて「RUNです!」って言えなかった悔しさや、実はどうでもいいところでヤマピが滑って肘を脱臼し本気でヤバイと思ったこと、下山後の入浴後パンツを忘れた事に気づきノーパンで爽快に帰ったことなどなど。

うん。ほんとどうでもいいことばかり思い出します。どんな山行もだいたいこんなどうでもいい思い出がきっかけで色々出てくるんですけどね。

毎月28日は白州・森薫るハイボールの日とします。ただ呑みたいだけだよね。

2015年10月23日金曜日

秋の沢登。

夏の間大いににぎわった小坂の沢登http://www.osaka-taki.com/tour_info/sawanobori/index.html
 
9月14日を最後にしばらく足が遠のいていた。本格的な紅葉の時期に今年のお礼&最後のお別れ方々沢に行ってきました。
 
秋晴れの中落ち葉浮く渓谷でひさびさの水泳。しびれる水温だがなんだか心地よい。大滝でお神酒を奉納し一年の感謝をささげる。その後は滝上から滝壺渡るチロリアン張って滑空実験。まだまだ改良は必要だけど、うん。遊び方は無限大だ!!
 
帰りはドボンドボン飛び込みまくって帰ったのでキンキンに冷えたけど水から上るとなんだかなごり惜しい気がした。やっぱ好きです沢登。
来年は10月までやるぞ~。遊びに行く間がますますなくなるな~。来年までさらば!沢登。

2015年10月17日土曜日

小坂の滝 兵衛谷完全遡行編 最終章

長い年月この日が来るのを待っていたような気がする。日頃慣れ親しんだ小坂川。幼いころにふと抱いた感情。この水はいったいどこから流れてくるのだろう。その答えはここにあった。

ここは月か、火星か・・・。そこには非日常の風景が広がっていた。無機質な荒涼とした砂漠か、異星の地に降り立ったかのような光景の中に青空が映える。

源頭部付近の渓相



2750m兵衛谷最初の滝にして遡行最後の滝。落差10m程度の直瀑。今にも涸れそう、またはこの標高でこれだけの水量。両方の表現が出来るだろう。(あまりにも感動して写真すらとっていない)

この滝を最後に兵衛谷は谷ではなく湿原に変化した。岩間を滔々と流れる細い水音。傾斜もわからぬほどなだらかなその源流帯に立つとそこは霧の中だった。

賽の河原と呼ばれるその場所は三途の川のほとり。無数のケルンがたちならびまさに魂の集まる場所。辺りを包む霧も助けて幻想的な雰囲気だ。

賽の河原へ詰め上げた


左右の果てが分からない広い平原をコンパス頼みに方角を決め歩き出す。奇跡的にも迷う事もなく、ほどなく踏み跡と合流した。紛れもない御嶽登山道である。

この瞬間に唐突にも僕たちの兵衛谷遡行は終わりを告げた。ただ今は余韻に浸ることなくとにかく下山することに頭が回っている。
賽の河原から摩利支天乗越を越え五の池小屋へ。さすがにヘロヘロなのでしばし小休止。
主のI川氏は今日も不在。僕たちが遡行するときはいつも入れ違いのようだ。

泊まっていきたいほどの快適な山小屋だが後ろ髪ひかれつつ出発。下山途中8合目を過ぎた辺りでI川氏に出合う。歩荷のようだ。シーズン中何度も山頂と下界を往復する彼の体力と根性には脱帽だ。

通いなれた御嶽登山道は高速道路のよう。すたすた降りてあっという間に登山口に飛び出した。
ここに僕たちの兵衛谷完全遡行は貫徹した。濁河温泉市営露天風呂につかりながらようやく余韻に浸る。

見慣れた三の池


2日間ともに10時間を越える奮闘に体はボロボロ。温泉から上がり根尾滝駐車場にデポった車を回収すべく下界向けてドライブ。約1時間ドライブで根尾滝駐車場に到着。久しぶりに車から降りると姿勢が固まっておりガチガチに!やっとの思い(?)で車を回収し帰路へつく。

ここから先の事は正直あまり覚えていない。というか遡行を終了した今どうでもよい。

長い年月を費やした兵衛谷完全遡行への道。そして駆け足で駆け抜けた2日間の完全遡行。全てが年輪となって僕たちの魂に刻み込まれていく。そんな魂の遡行。これぞ兵衛魂。
(※ちなみに相棒のK山師の鉈には”兵衛魂”の銘が刻印されている。)

この先こんな魂の遡行をいくつ繰り返すのか。分からない。その度に小坂の瀧魂のしわは増え厚みが増して行くのだと思う。僕のライフワーク。これからも小坂の山・谷(たまに浮気して他のエリアも歩くけど)を歩きまわりまだ見ぬ”魂の記憶”を探して冒険を続ける事でしょう!まだまだ奥が深い!だからやめられない小坂の谷。

小坂の瀧魂。まだまだ発信し続けます。命ある限りですけどね。


2015年10月13日火曜日

小坂の滝 兵衛谷完全遡行編 その3

御嶽山の噴火以来、兵衛の源流域への懐古心が強くなっている。兵衛谷の源頭は現在入山規制エリア内にあるため立ち入る事が禁止されている。ただ二度と行けない場所ではない。いつか規制解除の暁には必ずもう一度訪れたいと思っている。兵衛の最初の一滴を求めて再び・・・。



兵衛谷遡行2日目は標高1600m付近からのスタート。今日は標高2800mのサイの河原まで一気に1200m高度を上げるハードな工程。早朝6時早めの出発を切る。
兵衛谷大橋上流は再び発達した溶岩流のゴルジュ。水線に執着し泳ぎを交えた突破も想定できるが右岸の草付をトラバースした方が随分と早い。時間を優先する僕たちはもちろんトラバースを選択。一気にゴルジュ帯を通過する。


ゴルジュ最後の大釜5m滝を左岸より直登すると渓相は穏やかになる。いくつかの小滝と渡渉を繰り返しながら上流に進むと長沢との出合に5m滝がかかる。過去にK山氏はこの滝の上で尺イワナを釣り上げている。標高は1800mこんなところにも立派なイワナが住み着いているのが驚きだ。
ここからは美形滝のオンパレード。中でも5m程度の斜瀑は際立って美しく僕のお気に入りの滝の一つだ。


右岸岩壁より噴出した白い滝(10m)を越えるとほどなくシン谷・尺ナンズ谷の二股に出る。
この二股にはそれぞれシン滝(40m)、尺ナンズ滝(30m)が懸る。ふたつをまとめてパノラマの滝と称する。兵衛谷はここで名前を変え本流であるシン谷に進路を取る。
シン滝40mは大高巻だ。右岸より急登し壁がたったところにうまくトラバースする踏み跡がある。それを辿り滝落ち口ピタリに出る事が出来る。この先百間滝までは直登できる滝ばかり。楽しいシャワークライミングでガシガシ高度を稼ぐ。



百間滝(50m)何度訪れても圧巻だ。僕自身この滝より上は未体験ゾーン。K山氏にとっても初の百モ間滝との対面だった。
そのスケールの大きさにしばし見とれてしまうがこれを越えなければ前には進めない。右岸は絶壁。どう見ても高巻きラインは左岸だ。滝もデカイだけに高巻きもデカかった。登れそうな斜面を岩壁向けて斜上。岩壁基部をトラバースするが途中ガレガレの気持ち悪いトラバースがある。慎重にわたり何とか高巻きに成功。標高2000mを過ぎての大高巻きは気力も体力もそぎ落とす。


百間滝の上にも間髪入れず20mほどの直瀑が。こちらは踏み跡をたどり右岸より高巻いた。
谷はいつの間にかガレガレのゴロゴロ。ふんずけると動き出す新しい転石で埋められた急な谷底をひいひいいいながら登る。感覚的には沢登というよりか登山に近い。なが~いゴーロを気が滅入るほど歩いていると突如として10m滝が眼前に現れた。しかもその滝を前衛として多段の滝を擁する絶壁が行く手をふさいだ。


さぁてどう超えるか・・・。とりあえず一段ずつこなしていくしか手はなさそうだ。最初の10m滝は左岸のガレルンゼを詰めると意外と簡単に落ち口に出られる。そこに待ち受ける10m滝は美形!
縞模様の岩壁に筒状を落ちる一文字滝。しかも滝壺は透明度の高いブルー。標高2300m付近でこのような美しい滝に出会えるとは・・・。感無量。しかしながらここはかなり急峻な場所。巻道を探すとかなり立ったルンゼの中に弱点を見出す。とはいえ一部垂直に近い部分もある。ダケカンバの幹をつかみながらモンキークライムで上がる。標高が高いので無論息切れ。”ほうほうのてい”で巻き上がりへたり込む。ほんとしんどいです。高巻き。


ヘロヘロになりながら垂直ゴルジュともいうべき多段30mを越えるとまたもや延々と続くゴーロ帯。急傾斜のゴーロ歩きは見た目以上に体力を奪われる。昨日からの蓄積された疲労も助けペースは上がらない。しばらく歩き続けると眼前に岩壁が。壁か、滝か・・・。いずれにせよ厄介な代物に間違いない。だんだん距離を縮めていくとそれが滝であることが分かった。神津の滝。まさにその滝だった。


写真集でしか見たことが無い、生で見たい滝のひとつであった神津の滝。今目の前にその滝が現れた。疲れた体に感動で電撃が走る!サイコー!!たぶんアイドルファンが握手会に参加して本人と握手した時と同じ感覚(?)なのかもしらない。

しかしアイドルのように優しくはないのが自然の掟。森林限界付近という事もあり背の低いブッシュに悪戦苦闘しながら巻き上がる。途中対岸を望むと今にも動き出しそうな荒々しい岩壁が。ここはまだまだ”若い”地層。変化の激しさが肌に感じられる。


神津の滝を高巻いてもまだまだ終わらない。前方にはまたも岩壁が・・・。もう高巻きは勘弁!と思いきや近づいてみるとなんとか登れそうな傾斜。取りついて見れば簡単に登る事の出来る多段の滝。この標高で果敢にもシャワークライミングに挑戦。冷たい谷風が吹きあがるがそれすらも心地よく感じる。クライマーズハイか(?)


ふと周りを見渡すと火星のような様相になってきた(火星は行ったことない)いよいよ源頭は近い。
ガレガレのほとんど伏流した谷筋を半ば無心で歩き続けると青空に左右を覆っていた背の高い岩盤が交互に交わり途切れるのが見えた。その交点には紛れもない滝がかかっていた。これが世にいう日本最高所の滝か!!

今日はここで止め!最終章にこうご期待♪



2015年10月12日月曜日

小坂の滝 兵衛谷完全遡行編 その2

自分の中では兵衛谷の流域はおもに4つのパートがあると考えている。濁河川出合から吸口滝までのイントロ的下流部。続いて石楠花沢出合までの溶岩流の美しい渓相が特徴的な中流部前半。材木滝までの大滝を主体とした豪瀑帯の中流部後半。一気に垂直距離を上げ変化の激しい上流部から源流帯。この変化をいっぺんに楽しむことに完全遡行の楽しみがあるのです。

そんな中で僕自身大好きな場所があります。それがここから始まるしょうけ滝下流部のゴルジュ帯。吸口滝を越えゴーロを歩くとほどなく岩質ががらっっと変化した事に気が付く。黒く滑らかな曲線を描き側面から覆いかぶさるように溶岩の壁が迫って来る。だんだんと狭まり半ドーム状になったその先には底知れぬ漆黒の大淵が広がり奥に小滝が落ちている事が確認できる。

昼なお日が差さぬ急峻な地形にあって、更に覆いかぶさる溶岩の黒い壁の威圧感も助けてなんとも不気味な場所。漆黒の大釜を泳ぐには勇気が要るが恐怖心を抑え込みながら小滝のヘリに取りつき這い上がった。

兵衛の胃袋に突入
ここから始まる渓相はまさに”異次元”。谷は極端に狭まり細いグネグネの水路はまさに”胃袋”の様だった。そう僕たちは”兵衛の胃袋”に入ってきたのだ。度重なる泳ぎのために完全装備はしていたものの寒さが堪えるようになっていた。とはいえまだまだゴルジュは終わらない。

滝の無い滝壺、独立岩峰、箱滝などの美観を経て兵衛谷最峡部を通過。ここは両手で突っ張れるほどの谷幅。水圧を避けて小巻する。すると間もなく中流部ゴルジュの出口に鎮座するボス、しょうけ滝(2段20m)が現れる。しかし巻道は明瞭で左岸の五徳岩と呼ばれる岩くつを潜り抜け滝上部に出る。ここで一気に谷は開け開放的な広々とした空間となる。泊まっていきたいロケーションだがまだまだ前に進む。

兵衛谷最狭部
しょうけ滝
しばらくは平凡なゴーロ帯を進むとこの谷名物の”出口の無い扇滝”に出会う。溶岩の下を水がくぐりサイフォンの様になって石橋の外に湧き上がっている。絶対落ちたくない滝のため左岸を慎重に登って越えていく。

ほどなく兵衛谷取水堰堤。正面突破をもくろみフリクションで登る。しかし上部に手がかりもなくずるずる滑り落ちる。ここは無難に。堰堤は右巻きで難なくクリア。ここからは兵衛谷本来の水量を取り戻す。溶岩流のナメ床も優美なものではなく大水量ドバドバの”暴れナメ”。渡渉も若干デリケートになる。出発から6時間経過する頃足取りも重くなってきた。ここから始まる大滝群を前に大休止をとる。ここまででも随分と変化に富んだ素晴らしい遡行で満足気味だが僕たちの目標はあくまで完全遡行。兵衛谷最初の一滴を見ない事には終われない。1泊2日で抜けるためには今日中に少なくとも材木滝くらいまでは歩みを進めておきたい。

出口の無い扇滝
さて昼食もさっと済まし遡行再開である。水圧の強い渡渉を繰り返しゴーロ帯を進んでいくと石楠花沢を右に分け間もなく2段の滝が行く手をふさぐ。泳いで突破もいいのだが体力の消耗を避け右岸から小巻することに。泳いで突破した方が早いだろうが高巻きも5分程度で完了したので良しとしよう。二段の滝上の廊下は妙に魚影が濃い。ドンつまりには大きな釜を持つ通称”魚止滝”なるほど魚止めというだけあって魚がたまるのかな?そう思いながらも悠長に竿を出している場合でもないのでこちらも左岸を小巻して滝上に立つ。


大きな釜を持つ魚止滝
この魚止めを皮切りに大滝の競演が始まった。先ずは怒涛の大水量を一文字に垂直に落とす吹上滝(25m)滝の前の岩盤に水流がぶち当たり直角に曲がる。そのためものすごい勢いのしぶきが吹き上げられている。この滝も比較的コンパクトに左岸を高巻き。NPOのルート工作のおかげで楽ちんだ。吹上滝上部にもナメが続き5~6mほどの幅の広い滝×深い滝壺のセットが連続する。どれも容易に突破できるが滝が連続するため疲れた体には堪える。


ドバドバー!吹上滝
目の前の景色が再び狭くなり左右の側壁が高くそそり立つと最後の大滝の連瀑帯に差し掛かる。前衛の屏風滝(30m)は文字通り屏風のような岩盤が滝を取り囲み容易に寄せ付けない威圧感を持った滝だ。この高巻きはちと癖がある。左岸のザレ状より巻き上がり屏風の岩壁上部に出る。スリップに注意を払いながら絶壁すれすれを絶妙についた踏み跡をたどるとほどなく岩折滝と屏風滝を分ける痩せ尾根に乗り上げる。さすがにこの高巻きはしんどかった・・・。
サコ状を下ると岩折滝。しかし観瀑するために降りる気力も無くそのままの高度を維持しまとめて高巻することに。途中足元に岩折れた木を見ながらきわどい(泥壁の立った)トラバースをこなし岩折滝落口ぴったりに巻く事が出来た。全ての高巻きを終えて所要時間は1時間。これでもかなりコンパクトに巻けたのではないかと思う。

屏風滝は遠望し高巻き

さぁここからは気力勝負。目標の材木滝までは距離にしたら3km足らず。魚還滝(13m)を左岸より巻き越えると眼前に巨大な石橋が出現した。兵衛谷の盟主・龍門の滝だった。昇り竜の腹の下を滝が流れ落ちる奇観。溶岩の谷ならではの光景だ。泳ぐのが嫌なので直登ラインははパス。左岸よりコンパクトに巻いた。間髪入れず袴滝(20m)この滝の大高巻きはぼくらをヘロヘロにさせた。もはや無言である。大釜の滝などナメの美しさに見とれる間もなく黙々と歩く。

盟主・龍門の滝(15m)
ようやくたどり着いた材木滝。この時点で17時過ぎ。通常の遡行ならとっくに行動終了している時間帯にも関わらず僕らは今夜の宿を求めてさまよい歩いていた。日も暮れ薄暗くなった樹林帯を疲れ切ってとぼとぼと歩く。もはや気力も尽きかけている。そんな時目の前に大きな人工物が現れた。兵衛谷大橋である。と同時にもうダメ。完全に集中力が切れました。今夜の宿は迷わず即決。ここで終わりにしよう!

幅広い堰堤上の材木滝

長かった一日目の遡行は終了。さっさとテントを設営し湧水で米を研ぐ。米が炊けたらケイチャンだ。荷物の軽量化も重要だが明日への活力がもっと重要。沢では生米から炊く米が特にうまい!ケイチャンも重いが持ってきた甲斐があったもんだ。わずかな焼酎でも十分。疲労困憊でこの日は瞬殺。夕飯も早々にシュラフにもぐりこみ深い眠りに就いた。明日は強以上に過酷な試練が待っているだろう・・・。明日は明日の風が吹くさ。

つづく。

2015年10月11日日曜日

小坂の滝 兵衛谷完全遡行編 その1

近年恒例となっている秋の遠征を終えその余韻も長引きましたがようやく抜け出せそうです。
黄連谷への挑戦は自分の限界と思っていたボーダーラインを越えたそんなブレイクスルー体験を与えてくれました。顧みて過去にもそんな経験がいくつもあったな。小坂では兵衛谷にずいぶん鍛えられました。この機会に今日は兵衛谷についてお話ししましょう。兵衛谷には人生半ばにしてすでにかなりの”情熱と時間”を費やし、思い入れの深い場所となっています。ゆえに3部編成でおさまるかな・・・。それでははじまりはじまり~。

これから始まる冒険の舞台


兵衛谷は小坂の谷の中でも特別な場所です。下流部の陰鬱なゴルジュ帯、中流部の絶壁に囲まれた大滝の迷路、上流部の荒涼とした地獄のような景観、詰め上りのお花畑など変化に富んだバラエティー豊かな谷なのです。僕にとってはただの谷(場所)ではなくもはや”師”のような存在です。幾度となくその懐深く抱かれ、試練を与えられ、越えていく。そんな修行(?)を経験させてもらいました。ただほとんどはパートを切り取っての日帰り遡行。完全遡行の機会を探りながら月日は過ぎていった。
2013年ようやく完全遡行決行のチャンスがやってきた。相棒は沢を始めたころからの同志K山氏。7月の後半、遡行適期に半ば無理やり日程を合わせその日に臨んだ。

AM4時一年で最も日が長い季節だけにすでに白みかけている。挑戦の朝は何ともすがすがしく晴れやかな気分で始まった。早々に準備と簡単な朝食を済ませ待ち合わせ場所である濁河登山口へ車を走らせる。途中御嶽パノラマラインのシークレット(今は公になっているが)展望スポットに停車。車を降りてガードレールを乗り越えればそこは天空に突き出した桟橋。気持ちのいい(高所恐怖症の人には気持ち悪い)場所だ。正面には黒い大きな山体の御嶽山を望む。眼下には底知れぬ深い谷が見える。「この谷を歩いてあの山のてっぺんまで行くのか~」これから始まる挑戦に武者震いした。よっしゃ気合入ったぞ!車に乗り込みだれも通行していない早朝の山道を集合場所めがけてかっ飛ばす。

AM5時濁河登山口に到着するとK山氏のジムニーを発見。東京から前夜入りして仮眠しているのを起こすと、どうやら寒さであまり眠れなかったようだ。夏とはいえ外気温は10℃程度。車中泊でも暖房が欲しいくらいの気温だった。いつものように作戦会議しながら準備に入る。天気予報を見ると今夜は雨。明日も曇りの予報だった。3日目は雨か曇りか・・・。今回の遡行、あまり天気には恵まれそうにない。それならばということで当初はがんだて公園より遡行開始し賽の河原まで2泊3日で抜ける予定をしていた。しかし今回は天候の悪い事を理由に1泊2日で抜けてしまおう!ということに。この時点でがんだて公園より濁河本谷を遡行し兵衛谷を遡行するプランから3km4時間を省略するために根尾滝遊歩道より直接兵衛谷に入渓する選択を取った。とはいえ2泊欲しい距離。(総行程約23km)それを1泊でこなすにはスピーディーに切り抜けなければならない。すなわち荷物も大幅に軽減が必要だ。あれはいらん、これはいらん。時間ももったいないのでサクサク選別。しかしこればかりは悩んだ。

僕:「ビール2缶どうする?」K山氏「うん無しで行こう」、僕「・・・」仕方ありません。完全遡行のためならば!(泣)ってちゃっかり焼酎は200ml持って行ったけどね。

濁河登山口・概ね10kg以下の荷物に軽量化!

準備を済ませいざ出発。登山口に1台デポしもう1台で出発地点である根尾滝駐車場を目指す。時刻は6時過ぎ。御嶽山より朝日が昇る。陽の光に照らされ体温も闘志もテンションもあがって来た!根尾滝駐車場にはAM7時には到着。沢装備に身を包みハーネス装着。ジャラ類もぶらさげ(使わないけどね)最後はライジャケをリュックにくくりつけ完成!そう。この谷ではスピードを重視するとき泳ぎは必須課題なのです。積極的に泳ぐことで高巻きを省略し最短距離で進むことができる。ライジャケは浮力があり保温効果もあるためサイコーに頼りになる道具だ。さて、通いなれた根尾滝遊歩道を谷底向けてガンガン下る。谷音が近づくにつれ鼓動も高鳴る。心地良い緊張感だ。

いざ入渓。兵衛谷出合。初めてこの場所に立った時の緊張感が蘇る。それは今回よりもずっと前の事。良く晴れた6月・早春のころ初めて遡行した。その時兵衛谷に入って最初に登場したわずか5mの滝に完全に敗退し来た道を戻った。あの時味わった敗北感。そこに当時の僕のボーダーラインがあった。その後同じ滝に何度も挑戦した。時には大高巻したり、時には懸垂下降したり。単一の滝で最も触れ合いいつまでも慣れないそんな”異様”な雰囲気を持つ滝がある。

最初の関門は鬼門のようなゴルジュ。

歩きはじめは明るいゴーロ。1時間ほど歩くと左岸よりシャワー状の10m滝が現れる。この先次第に谷幅が狭まり”核心”に向かう。ここからは上流はほん核的な沢登。一旦入ったら出られない(?)迷宮の入口。谷が左にぐいっと曲がると突如として側壁がせり上がりゴルジュの様そうを呈する。バンドを辿り行きつく先が例の関門5m滝。やっぱりいつきても慣れない。どくとくの威圧感をもつその空間。しかし今回はフル装備で正面突破する気でいるから問題ない。バンドより水面までは2mほど。水深が目測できないほど深く蒼黒い。門のようなゴルジュの出口は懸垂で着水そのまま降りて滝身に取りつく。そのまま流心をひとまたぎし滝身すぐ右岸を直登するのが直登ライン。

ゴルジュ手前の支流の滝



気合十分。補助ロープを出しリードで入水。深い滝壺での泳ぎはいつもぞっとする。距離にしてわずか2m程度の泳ぎだが冷たい水温に一気に体はこう直する。滝身の少し右、岩盤に水中から這い上がる際の体の重いこと!水を大量に含み冷えた体、それに加えつるつる滑る岩肌に神経をすり減らしながら気合で乗り込む。脈が早打ちして若干息が上がったようになる。「あ~快感!」この少し焦る、緊張感。たまりません!ここからは冷静沈着に。後続の貝山氏も這い上がったことを確認しロープを回収。束ねて肩にに掛け、そのまま滝を登攀。右岸は階段上で見た目以上に簡単に登ることができた。

最初の関門・2条CS5m滝は右岸を直登


関門を突破し”兵衛の懐”に潜り込むことに成功した。ここからが本番だ。間髪入れず淵が現れる。もう迷いはない。躊躇することなく泳いで突破。10m程度の泳ぎもライジャケのおかげで楽勝!その後も谷幅は広がる事なく側壁は威圧感はないものの高く谷の深さを感じる。ほどなく地形図にも名前が載っている曲滝(20m)に到着。初めて訪れたのは1年前。写真集・小坂の瀧の最初に登場する滝。「この滝生で見てみたいな~」と思っていた滝を目の前に感無量だったことを思い出した。またも感動している自分に気が付く。やはりいつ見ても素晴らしい。愛でながらも目線は高巻きラインを探っている。滝壺より下流右岸の草付に明瞭な踏み跡有り。上部は少し立っているものの問題はない。滝を取り巻く岩盤の際をコンパクトに巻き上がり落ち口すぐのところに降りることができた。
曲滝を遠望
泳いで突破
しばらく進むと谷はギュッと圧縮され2段の滝となって行く手をふさいでいる。吸口滝である。前衛の3m滝を右岸の岩壁を巻き落ち口に立つ。ここが小核心。ボロボロの残置ロープが垂れ下がっているものの、その姿は「僕君たちの体重を支えてあげられる地震が無いんだな」って言っているよう。そもそも支点のハーケンも効いてんだか。取り合えずフリーで抜けられるか試登。見た目はツルツルで登れそうもないが適度なガバとスタンスがつながり最後はラバーソールのフリクションでバンドに乗りあがる事が出来た。
吸口滝1段目

二段目落ち口より下流を望む。左岸のフェースを登る。


まだまだ側壁は高く人智の及ばなぬ絶壁に守られ両岸の急峻な尾根には原始のままの森が残っている。この巨大な谷に人間のなんと小さなことか。深山幽谷、まさにぼくたちはその真っただ中にいるのだ。

その2につづく。