谷の中の気温は完全に日照に支配されている。月の世界では昼と夜の差が100℃?あるそうな。まあそこまではいきませんがお日様のパワーは偉大であることに気づかされます。核心部のゲート状2段5m滝で時刻は15時。がんがん泳ぎで突破してきた僕たちにとって陽の光もささないマイナスイオンの爆風吹き荒れる滝壺はまさに”窮地”でした。寒さでかたまり動かない体に、魔法瓶に入れてきた”アツイ”生姜湯を注ぎ込み活力を得る。アツさを取り戻したぼくたちはなんとかその窮地を乗り切り、ほどなく平穏な河原へとたどり着いた。ここを今夜の寝床としよう。はじめての沢泊は新鮮そのもの。釣果は不振、が、焚火を前にビールがすすむ。「あ~幸せ!」ココロからそう思えた。ひと気のない、ただ、沢のゴーゴーと流れる水音だけが漆黒の闇の中に延々と響き渡る。そんな野外生活の夜は深まり、気づけば時刻は9時。野外生活においてはもう十分深夜だ。てなわけで夜更かしもそこそこに就寝。高揚感や不安で寝つきはあまりよくはない。明日はどんな一日になるのだろうか。
テン場は快適!さあ朝飯を済ませて出発だ! |
かんたんな朝食を済ませ2日目のスタート。遊歩道を経由して根尾滝までたどり着く。ここはいつも見慣れた光景だ。しかし今日はこの滝を越えるぞ!と意気込んで臨んでいる。落差63mの直瀑。僕の人生の中においてもこれだけの大きな滝の高巻きは初めての経験。どこから巻こうかと思案しながら取りあえず接近しながら考える。滝の50m手前の草付のルンゼはどうみても踏み跡がある。もしやこれか?ということで早速登り始める。斜度は急だが登高には問題ない。汗だくになりながらどんどん高度を上げる。100mくらいかな。ほぼ垂直に登って来る。途中笹薮に突入しこの先は泳ぐように藪漕ぎ。このまま果てが無いのかと思うとビニールのテープが!これを少々辿っていくと人工的な石積みを発見。これをのっこすとビックリ!軌道敷きじゃないですか。
こんな山奥にこんなものがあるとは・・・。とはいえ平らで歩きやすいのでまんまと利用。少し行くと沢床が近くなり根尾滝を巻き切ったようだ。実に1時間半。体力と気力を消耗する大高巻であった。ゆるやかなところをえらんで降りるとそこには意外な光景が広がっていた。
根尾滝の上は今までの渓相とは明らかに異なり、板状節理が重なり合い、水流に洗われた岩肌は黒光りしている。まさに”溶岩流の谷”にふさわしい渓相である。
その自分にとっての”異次元”の光景にしばし見とれ、そして人間の気配の一切しないその原始の風景の中に今こうして自分が自分の足で到達したことに対する喜びで満ち溢れていた。達成感。まさにその言葉がぴったりである。ただそれはここで遡行が終わり、車に乗って帰るだけ♪というような状況であったとすればである。ここからが”本当の試練”の始まりである。
ここからはまた次のおはなし。
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