2022年9月19日月曜日

【備忘録】大井川赤石沢 その1”入渓”

【場 所】大井川赤石沢(4級)

【日にち】2022年9月12日~14日(前夜発)

【メンバー】ホラくん、クマ

大井川赤石沢。沢登りを始めたころから目にしていた南アを、いや、日本を代表する茗渓中の茗渓。南アルプスでも南部の山深い赤石岳に端を発する、流程が非常に長い沢だけに、沢そのものもさることながら下山も大変長く、かつ、出発地にたどり着くだけで自宅から6時間近くかかるため、入りも合わせると4日間必要だ。それに加え、遡行そのものも決して楽ではなく、泳力、登攀力はもちろん、水量や天候などにも大きく左右され、もはや実力のみならず運も味方につけなければ突破できない、そんな難しい谷。

今回、赤石沢遡行を小坂の滝めぐりスーパー助っ人&スーパーエース・ホラくんに提案したところ、二つ返事で「行きましょう!」となった。これほど頼れる相棒が居るのだから今登らない手はない!

日程も即決し、忙しいシャワクラシーズンが終わってすぐに休みをもらい3日間一発勝負で臨んだ。

百間平より望む赤石岳山頂はまるで独立峰のような存在感


一週間前から天気が気になるが、どうやら台風ラッシュの予感。直前までヤキモキしたが、日にちが近づくにつれみるみる間に天気予報は好天!しまいには3日間ほぼ晴天確定。おまけに台風通過後1週間ほとんど気になる雨は降って無いときた!こんな僥倖めったにない。これはもうなにがなんでも行くっきゃないでしょう、ということで11日は仕事を終わらせその足で静岡入り。千頭の道の駅に24時到着。ここから始まる冒険への期待と興奮でその夜はほとんど寝付けなかった。

道の駅からスタート地点の沼平までは1時間ほどで到着。さぁいよいよ冒険のスタートだ!ちなみに入渓点までのアプローチは2通りある。ひとつは東海フォレストの登山バスを利用すること。もうひとつは徒歩又は自転車でのアプローチ。バス利用には条件があって、東海フォレストの運営する山小屋に一泊することが必須なのだ。赤石沢遡行の場合は百間洞山の家が適当。ただ、この方法のデメリットは山小屋に宿泊すること(小屋泊は1万円程度かかる!)とバスの時刻に合わせて行動しなければならず、時間の制約を受けることだ。そのため今回はこちらは却下、二人とも体力と金欠には自信があるのでスピードと機動力の高い電動チャリを持ち込んで往復32kmのアプローチを走破することにした。


電チャリでGO!

ということで支度を済ませ7時にチャリでスタート!幸先よく沼平のゲートでは仕事に行く作業員さんが開門するのに便乗してスムーズに通してもらった、しかも皆自転車にやさしい。こちらよりも先に皆挨拶してくれる。なんかいいね南アルプス!2か月前の荒川三山&赤石岳のガイドの際にバスに揺られた道。チャリで走るとなんと爽快なことか!!登り下りもあるけどそこは電チャリ。すいすい進んで入渓点の牛首峠には1時間半でたどり着いた。


入渓点から赤石岳を臨む

そうそう、この看板。ここから入渓するんだよねー!しかも唯一ここからしか赤石岳を臨めない。はるか先に見える赤石岳、谷底を忠実にたどり2日後にはその頂きに立つのだと思うと気合が入る。沢装備に切り替えいざ入渓!歩道を進み、つり橋から入渓できるみたいだけど僕たちはまっすぐに降りるアルミはしごを利用し最速で入渓した。


梯子で降りて入渓

AM8:40ついに降り立った赤石沢。その流れは想像していたものとは大きく異なりとてもおとなしく優しい感じ。やはり平水より少ないのでは?そう感じさせる穏やかさに早くもこの遡行の成功を確信せずにはいられなかった。

つり橋下の水位計を見ても水量ミニマム!


今回の遡行のサブテーマ(いやこちらがメインか?)として、そこに棲むヤマトイワと戯れることが大きな目的な一つだ。ホラくんいわく、かつての赤石沢は取水堰堤よりも下部でもうじゃうじゃイワナが泳いでいたということだが、2019年の台風などの影響で下流部では魚影を見なくなったとのことだ。確かにここにはいるだろー、と思うような場所でもイワナは走らなかった。

入渓から約20分で最初の大淵(イワナ淵)に到着した。水深は推し量れないほど深く、規模も大きい。泳いで落ち口から這い上がるのがセオリーか、と左岸を見るとなんだか高巻けそう。岩壁に登り、溝を落ち口に向けて降りる所にトラロープが下がっていた。やはり釣り師が来るのかな。
イワナ淵は泳ぐのを嫌って右から巻く

しばらく進むと大岩の脇をナメ滝が流れる大淵に出会う。ここも泳ぎを避けて左から巻いた。しかしながらこの谷はいちいち岩が大きい。巻くのもボルダリングのように岩を登ったりと一筋縄ではいかない。

この淵は左から巻き越える

いくつかの小滝と淵をやりすごすといよいよニエ淵。名前からしてヤバそう!?ここはさすがに泳ぐ以外突破方法はなさそう。ホラくんが先頭を切って入水。ザックを背負っているのにスイスイ泳ぐ。僕はザック泳法は苦手なのでザックをビート板よろしくバタ足でなんとか切り抜けた。落ち口に直接取りつくラインもあったがぬめって這い上がりが難しそう。右壁が登れそう、ということでホラくん試登。絶妙につながるホールド&ステップで難なく突破!自分も習って取りついてみるとなるほどキレイ繋がっている!とはいえ水中から這い上がって水をたっぷり含んだからだとザックを背負ってのボルダリングは応えるわー。この先何度もこんな場面がやってくるとはこの時は想像していなかった・・・。

ニエ淵手前の淵は確か右からいったかな??


ちなみに泳ぎ対策ウェアは僕はライトネオプレンを上下着込んだ。ちなみにホラくんは上下フラッドラッシュ。水温は覚悟していたほど冷たくは無く、晴れている分むしろ快適なくらいだった。

ニエ淵を越える頃には時刻も10時を回り本格的に日差しが谷底にも入ってきた。右岸の支流から滝が落ち、奥にCS滝を持つ長淵では思わず息をのむような美しい景色を見せてくれた。ここでホラくんがザックからおもむろにカメラを取り出し撮影を開始した。ホラくんは沢屋としての顔の他にも”ネイチャーフォトグラファー”としての一面も持つ写真男子なのだ!今回も新しく望遠レンズを導入したから試運転だと意気込んでいた。沢装備+カメラ機材+釣り道具(テンカラ竿×2+今年から始めたばかりのルアーロッドも!)でおおむね20kgはくだらない。僕はというと軽量化ばかり考え要らないものを極力持たず食料もドライ中心で15kgまで落としてるっていうのに、いや~タフだね~!

枝沢の滝とCS滝の競演

このCS滝が曲者で、遠巻きには右から簡単に抜けられそうだったけど、いざ突っ込んでみると側壁はつるつる。落ち口にいったん降りて渡るほかないけど、そのための足場は落ち口に詰まっている水中の石。いかにもぬめりそうなその石に飛び乗る必要があり、そこに降りるためであろう残置ハーケンと、そこにぶら下がるもけもけのビニールひもをだましだまし利用して何とか超えた。ここも水量が多ければかなり難しそう。続く神の淵と呼ばれる難所のL字型の淵も難なく突破。下流部全般を通して言えることは水量次第でかなり難易度が異なりそう、その点今回はずいぶんやさしいのだと思う。

神の淵入口は右からへつった

神の淵落ち口の滝も楽勝♪



次に現れた淵では思わず叫び声が上がった!大きく垂直に立ち上がった大岩と深い釜、しかもその釜に光が真上から差し込みエメラルドグリーンに輝いているではないか!!なんと美しく、そして素晴らしいポイントなのだー!!ここでホラくんは「ここは飛び込むしかないでしょう!」と息巻き淵を泳ぎ左の岸壁を水中からハイステップでいとも簡単に乗り越えていくではないか。僕もそれに続きトライ!も水中からの這い上がりはくそ重く、雄たけびを上げ気合一発で這い上がった!もうここで全て出し切ったわ~。ヘロヘロです。一方ホラくんはというと、そのまますたすた岩の上に登り、発射体制をとる。そして8mはあろうかという大ジャンプで大釜にざぶーん!!2~3秒くらいは浮かんでこなかった。水面に浮上し「きもちいいー!」の一声、たしかに気持ちよさそうだけど今の僕にはそれをやる余裕はないよ。さ、先へ行こう!

最強の飛び込み台!

飛び込んだ後に浮かぶホラくん


この滝を過ぎたころからだろうか、イワナをちらほら見るようになる。その数は遡るほどに増え、しまいには群れを成して(いるように見えるほど)泳いでいるじゃないですか!?前情報では居ないと目されていたエリアだけに驚きが隠せない。ここでたまらずホラくんが竿を出す。そして一投目の毛針でいきなりHIT!釣りあげたそのイワナはヤマトイワナ(でも若干ニッコウが混じってる感じも見受けられる)。結局同じ淵で僕も含め4匹釣れた(全てリリースしたけどね)これは嬉しい誤算。今晩はイワナには当たらないと踏んでいただけにこれはありがたい!


はじめまして!赤石イワナ!

ここからしばらく進むと取水堰堤に到着。ほどなく北沢出合。12時に到着。昼食用に1匹イワナを釣り、ホラくんが刺身にしてくれた。う~んたまらん!!まだ始まったばかりだというのにこの谷の、この満足感はなんなんだー!半端ない、これが赤石沢かー!!そう感じながらこの先に待ち受ける”試練”を前に束の間の休息を楽しんだ。

その2”核心部突入”へ続く





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