2022年9月21日水曜日

【備忘録】大井川赤石沢 最終章”偉大なる赤石沢”

赤石沢生活三日目、夜中に目が覚め、寝床から空を見上げるとまだまだ月が高く上っている。時計を見ると午前3時。4時起床予定ではあったけれどパッチリ目が覚めてしまった。出発も早いことだし火を起こし直しながら白湯をすする。しばらくするとホラくんも目覚め朝げの支度。昨日仕込んだイワナのあら汁(通称ホラ汁)を温め直し、米を炊く。焚火は灯りにもなるし暖も取れるし調理もできる。まったくもって沢には無くてはならない存在だ。ホラ汁をすすり体に熱が入る。さぁ3日目のスタートだ。朝食を済ませ撤収し出発する頃にはあたりはすっかり明るくなり6時より百間洞の遡行を開始した。いよいよ詰めだ。百間洞は水量もぐんと減りはしたもののまだまだ源頭の雰囲気ではない。小粒だが端正な滝が次々と出てくる。相変わらずイワナもまだまだ濃い。

最初の3連瀑は右巻き

どの滝も難しくはないけどまだまだしっかり沢登りさせてくれる。滝と滝の感覚が狭まり行動が急激に上がっていくのを感じられる。いよいよ終盤だ。ゴルジュとまでは行かないまでも谷が狭まり側壁が立ち上がり始めた。いよいよ最後の滝のお出ましです。百間洞最後にしてこの遡行最後の滝は高さもあり立派な釜を持つの端正な直瀑。思わず見惚れてしまう美しさだった。まさにこの遡行をしめくくるにふさわしい見事な滝にしばし撮影タイム。ちなみにこの滝壺にもちゃんとイワナが居た。

最後の滝(落差15mほど)

この滝はさすがに登れないので右のルンゼから上がり絶妙に続くバンドを使って小さく巻くことができた。ただルンゼからバンドにトラバースする出だしの濡れた岩が滑りそうで気持ち悪い感じだったが、実際に足を置いてみると見た目以上にフリクションが利き難なく行けた。もちろん注意は怠らない。滝上部からやっとで源頭の雰囲気。標高は既に2200mを越えている。まさかとは思いながらも流れの中を観察しているとやはりイワナがいる。いったいどこまで生息しているのか。

そしていよいよクライマックス。谷は大きく開け、振り返ると南アルプスの稜線が目線の高さに迫ってきた。あたりも背の低いダケカンバの樹林になり紅葉(というよりは枯れている)の林が続きいっきに晩秋の雰囲気になった。7:30ついに百間洞山の家にたどり着いた!そしてこれで赤石沢を詰めきったことになる。達成感とともに得も知らぬ悲しみにも似た感情が湧いてきた。あーこれで終わってしまったのか、赤石沢。でもそんな感傷にひたっている余裕はない。なんせここからがある意味最も体力勝負な行程。この最低暗部から縦走路に復帰し赤石岳山頂を踏まなければ下山することさえ許されない。沢装備を解除し遡行者はこれにて終わり、今度はピークハントの登山者に成り代わるのであった。

百間洞山の家に躍り出た!


百間平までの上りはとにかくしんどい。2日間の疲れが蓄積しているため足取りも重い。ただ救いなのが背後に広がる雄大な南アルプス南部の山並みの美しい景色。立ち止まり振り返り元気をもらってまた登る。その繰り返しで百間平にたどり着いた。自身初めてとなる百間平は控えめに言っても最高の場所!背後には南の南アルプスの山並み、眼前には赤石岳と荒川三山(主に前岳)の荒々しい山並み。朝の光に照らされるその景色は神々しさすら感じる。景色を楽しみゆったりとした尾根道を歩きながらながらこの度の余韻に浸る。あーなんたる贅沢な時間だ。この雄大な景色、ネイチャーフォトグラファーが黙ってはいません。後ろに行ったり前に行ったり。疲れを感じさせないフットワークでシャッターを切りまくっている。ホラくん、君はもうプロだね。

荒川前岳 Phot by HORA

縦走路を振り返る Phot by HORA

百間平を過ぎればいよいよ赤石岳山頂部への取りつき。ガレた大斜面をトラバースして回り込み、最後に一気に200mを登る。休み休み着実に高度を稼ぎ、ヘロヘロになりながらもついに山頂に到着した!いやーしんどい、これでもかってくらいしんどかったー!頂上ではガスに包まれ景色は楽しめなかったけどもう十分全て楽しみましたから、もう欲張りません、というかおなか一杯です!!!もう勘弁してください。

赤石岳山頂にきたー!

山頂に立った、つまりこれで登りは終了。椹島(牛首峠)から出発して初めて下りに転じる瞬間。これでようやく下山路につくことになる。しかしこの下山も長い!標高3140mから1100mまで一気に2000mの下り。10:40頂上をあとにし下山開始。足もヨレヨレだけどガンガン飛ばす。結局椹島の登山口に着いたのが14時10分だからちょうど3時間半で下ったことになる。随分とばしたなー。登山口から牛首峠まではわずかな上り。もうほぼ無心で歩きやーっとのことでチャリのデポ地にたどり着いた!

ただいまー!

くたくたよれよれなのでしばし大休止。今は満足感に浸るというよりは疲労感に沈む感じ。20分ほど休んでようやく生気を取り戻し車に戻るべく16kmのチャリライドをスタートした。帰りは下りなのでらくちん♪とは言えないほどアップダウンがわりとあるしやっぱり疲労が積み重なっているので序盤こそ爽快だったが終盤は体のバッテリーも、E-Bikeのバッテリーも底を尽き、残り8%というところで何とか沼平ゲートに戻ってくることができた!これにて完全達成!!!達成感半端なーい!!!!

帰りは白樺荘のぬるぬる温泉で汗を流し、のんびりと小坂に向けてドライブ。結局家に着いたのは23時だった。まぁ遠いわ。

2泊3日、といっても前乗りしているのでほぼ3泊4日のこの沢旅はなまりがちな僕にとっては近年まれに見ぬ大冒険、そして見分を広げる価値ある時間となった。今回相棒を務めてくれたホラくんの活躍があってこその成功、そして遡行内容の満足感。感謝しかない。

赤石沢を全身で文字通り”味わい尽くし”その偉大さをビリビリと感じ魂に刻み込むことができた。後何度こんな魂の震える体験ができるかわからないので今回の遡行を丁寧に備忘録として残しておきたい。そんな思いで4章に渡る長編備忘録にってしまった。

ありがとう!赤石沢!!!また来ます!?








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