2023年4月7日金曜日

新たなステージへ

2013年、小坂の滝めぐりガイドとして専業ガイドの道を歩み始めた。その3年後、2016年には滝めぐりガイドの経験を糧に日本山岳ガイド協会の登山ガイドステージⅠを受験・取得し、全国的に活動の幅を広げる登山ガイドとしても活動を開始した。翌年にはステージⅡにアップグレードし現在に至るまで滝めぐりガイドの傍ら、夏山を中心に登山ガイドとしても活動をしてきた。

一般的には山岳ガイドという名称の方がなじみ深いのでは?いまここで登山ガイドと山岳ガイドの違いを整理しておきたい。

平たく言うと、両者の職能範囲(案内できる領域)の違いは登山ガイドは”登山道を案内”するガイドであるのに対し、山岳ガイドは”登山道以外”(いわゆるバリエーション)でもガイドが可能である点。また、登山ガイド、山岳ガイドにはそれぞれ細かくステージが分けられており、登山ガイドには三段階(ステージⅠ・Ⅱ・Ⅲ)、山岳ガイドには二段階(ステージⅠ・Ⅱ)ありそれぞれのステージで更に細かく職能範囲が決められている。

この前提で登山ガイドに絞って話をすすめると、ステージⅠでは無積雪期の案内、ステージⅡでは積雪期の案内にも対応する。ただし、無積雪期の案内においては難路や岩稜の案内はできない、また積雪期にあってもアルパインエリア(森林限界を越える場所)や岩稜・雪稜の案内はできないことや、営業施設から近い場所で日帰りできるエリアに限るなどの制限が設けられている。登山ガイドステージⅢでは範囲が広がり無積雪期であれば岩稜などの難路の登山道(山岳地図で破線などで示されるルート)が、積雪期であれば急な雪稜や岩稜を持たない、営業施設から日帰りが可能なアルパインエリアもその職能範囲となる。

そして、登山道以外も限定的ではあるが案内が可能になる。例えば沢登り。表現としては”沢歩き”とされていて、滝の登攀や釜の泳ぎなどが無い歩いて山頂や登山道まで抜けられる沢に限るなど限定されているが、登山道を外れたルートを案内することが可能になる。これはつまり、わずかに登山ガイドの前提条件から外れ、山岳ガイドの領域に踏み込んだ職能範囲となる。

そのため登山ガイドステージⅢに求められる能力には登山ガイドでは通常行わない、積極的にロープで確保しながら登る技術が求められるため、検定では常にショートローピング(顧客とガイドがロープで繋がって行動する)を前提に進められる。また、登山道から外れたエリアの案内を行うため読図、ナビゲーションスキルについても一定水準を求められる。

そのため登山ガイドステージⅢの受験資格として、無積雪期のバリエーションルート5本以上、1級以上の沢登り12ルート以上などのリード経験などを必要条件とされている。そのうえで書類審査に通過し、実技検定へと進むことができる。実技検定の内容は①ロープワーク②無積雪期ルートガイディング③積雪期ルートガイディングの3つの検定で、まずは①を受験し、合格しないと先に進めない。

僕が登山Ⅲを志したのは2018年。理由としては沢登ガイドとしての活動の幅を広げることと、岩稜(主に穂高の主稜線)の案内をできるようになりたいという理由で山岳ガイドとして活動している先輩ガイドから現場でショートローピングの技術を学んだ。そしてあくる2019年、書類審査に合格し、いよいよロープワークの実技検定を受験。6月初旬に西穂高岳で行われた検定の受験者はなんと僕一人。これに対し検定員は2名。結果だけ言えば惨敗。受験者がぼく一人であったため、途中から検定というより現場での実技講習となったのは怪我の功名。しかし検定を甘く見ていた。この程度で大丈夫、と高をくくっていたことを深く反省し、ここから3年、とにかくステージⅢに合格できるだけのスキルを身に着けることを主眼に置いて経験を積んだ。

そして2022年。いよいよ再起の時。今の自分の能力を確認すべく4月、妙義で行われた事前講習に参した。講習を受けることで「よし、これなら行ける。」と自信を持ってロープワーク検定の再挑戦を決意。

そして5月、いよいよ本番。西穂で行われた検定の参加者は12名(定員MAX)検定員も3名体制。1チーム4名に別れ、常にショートローピングの状態で西穂山荘~西穂高岳の稜線で検定が行われた。訓練と講習の甲斐あって出来栄えは上々。今回は難なく合格できた。

しかし、このスムーズな合格に少し気が緩んだ。次は最も得意分野の沢登りでのルートガイディング。今回は事前講習は受けず本番に臨んだ。10月下旬の奥秩父、稜線では雪降る寒いコンディションの中で開催された検定の受験者8名。今回も検定員は3名体制。僕は2名1組チーム。西穂の検定で一緒だった顔ぶれは半減していた、代わりに昨年からの受験者が半分を占めた。つまりこの検定も”落とす”検定であるということ。今回の2泊3日の検定ではテント泊2泊のため自炊が前提となり、テントも含め荷物は膨れ上がり、45リットルザックに無理やりに詰め込んで臨んだ。(参加者のほとんどは50リットル越えのザックが多かった)試験は①読図②沢でのショートロープ③生活技術が焦点となった。③については問題なかったが①②については大きくミスをした。一つ目はロワーダウンからの1/3レイジングシステム。事前講習を受けなかったこともあり、我流での練習をしていたため本番でバックアップが反転し、失敗を繰り返した。結局3日目で最後のチャンスを与えてもらい3度目の正直で何とか形になった。そして2つ目。読図では誤った尾根を下降したり(あとで復帰できたけど)地形図の磁北線を東西逆に引いたりとミスが続いた。この2つのミスを受けて試験後は正直落ちたな、そう思って来春の受験を誓い帰路に就いただけに、数日後に受け取ったまさかの合格通知には飛び上がって喜んだ。しかし、同時にこれはまずい、やはり”おごり”はダメだ、万全にして臨まなければならないと思い直し、冬の検定には事前講習を受けて臨むことを決意した。

年が明け、2月上旬の北八での事前講習。ビーコンでの捜索、埋設アンカーの要領など、やはり参加しておいて良かった!と思う内容ばかりだった。その後、講習での反省点や課題点を訓練すべく、冬の滝めぐりのガイドで忙しい合間を縫って、時には同僚に付き合ってもらいトレーニングに励んだ。そして3月中旬、本番の日を迎えた。そう、今回の検定ですべてが決する。認定に王手がかかっているだけにいつもより緊張した。受験生は11名3~4名1チームに分かれた。西穂から検定も講習も一緒だった面々とは気心知れた同志。皆お互いに励まし合い、全力を尽くした。検定は今回も2泊3日で行われた。この検定での自分の中での懸案は3つ。埋没アンカー構築と、雪崩埋没者捜索(5分以内)およびナビゲーション(同定表作成から)。初日、2日目と順調にこなし、懸案だった2つは上々とは言えないまでも順調にこなせた。大きなミスなく、むしろ順調すぎるくらい順調に迎えた3日目。残すは最後の懸案ナビゲーション。前夜作成した同定表に基づき個人戦でウェイポイントを通りながらゴールを目指すというもの。ニュウから北のコルに移動し、そこから稲子岳を経由し中山峠に抜ける。登山道ではないので良くずぼる。途中ワカンを履いたり、ストックを出したり、立ち止まって位置を確認したりと頻繁にストップアンドゴーを繰り返した。順調にウェイポイントを通過し稲子岳の山頂に到着。休憩し、さて、終盤、ここまでくれば合格したも同然!そう思い意気揚々と再出発しようとしたところ、無い。あるはずのピッケルが無い。どうやらどこかで落としたようだ。血の気が引いた。検定官に断り、ダッシュで来た道を戻り探したがみつから無い。正直終わった、と思った。ただ、ここで検定を終わらせるわけには行けない。ピッケルを早々に諦め検定に復帰。半分割り切って半ば後ろ髪惹かれつつ残されたわずかな検定の行程を終えた。最後の最後になんてことをやってしまったんだ!自分のバカヤロー、そして長年連れ添ったピッケルよ、申し訳ない!試験後数日自責の念で頭をもたげた。

それからひと月。待てど暮らせど通知は来ない。これは落ちたかな、来年受験しよう!と開き直っていたところに、その通知は舞い込んだ。届いた黄色い封筒はいつもより厚みがある。開いてみると紙以外に小さな紙包みが。この時点で確信!そう、それはガイド証。つまり合格!?とはいえまだわからない。3枚の紙の1枚をみると登山Ⅲの認定通知証が!やった、なんと合格したのだ!半ばあきらめていただけに喜びもひとしお。

4月の妙義での講習からまる1年。志してから5年。ここに僕のガイド資格としての最終到達点に達することができた。ただここからがスタートライン。資格とはある一定の条件をみたしたものを証するものであって、ガイドとして成熟していることを証するものではない。つまり登山ガイドステージⅢとして、案内したいエリアを案内できるガイドとしてようやくスタートラインに立てたのである。

ここからが正念場。今まで以上にリスクの高いエリアに顧客を案内する機会が増える以上、安全に案内できる技術はもとより、危急時の対応、顧客に安心を与えるホスピタリティーなど、今まで以上に磨き上げが必要だ。

慣れることなかれ、おごることなかれ。常に顧客本位。改めて自分の立ち位置を認識し、ガイドとしてさらに磨きをかけ、お客様に選ばれるガイドとして成長できるように志を常に高く持ち続けたい。こんな初心を忘れたくないので備忘録として、今後の戒め、そして人生の重要ウェイポイントとしてその軌跡を残しておこう。

さて、ここから新たなステージ。いよいよ本領発揮といきますか(笑)



2023年4月6日木曜日

静かな春の御嶽山をもとめて(摩利支天北西尾根)

3月下旬から4月下旬の春の御嶽山。毎年この時期は冬が終わり穏やかな気候が訪れ、平和で静かな雪稜を楽しむことができるのでお気に入りの季節だ。本格的に雪山を始めたのもちょうどこの時期の御嶽山が事始めだった。10年前は冬の御嶽、特に濁河側から訪れる人の数はそんなに多くは無く、トレースが無いのは当たり前で、毎回ラッセルだったことを記憶している。

しかしこの3年、冬でも週末になれば駐車場は満車。平日でも登山者が一定数入っているのでトレースが消えることは無く、森林限界まではまるで高速道路のごとき状況が多い。無論、いつ行っても誰かしら登山者に出会う。雪山で人に沢山出会うのは八ヶ岳くらいだと思っていたのはもう昔。御嶽山は冬山でも人気を博して(?)いるといってもいいのではないか。
この状況になったのもきっとYAMAPやヤマレコなどの登山系SNSの働きの大なるところは否めない。情報はリアルタイムに更新され、登山のうえでリスクとなりうる現地の積雪状況やルートの情報なども正確に追体験できるようになった。かくいう僕も良く参考にしている。
しかし一方で”未知への期待感・不安感”が損なわれ冒険性に欠くようになった。ネット上のブログや紙面での情報は全てを明らかにしていないケースが多い。そう、ある程度の”妄想”を誘う余地がある。しかしSNS、とくにGPSの位置情報の軌跡はその余地を奪う。写真なども正確に撮影場所をプロットしてくれるので実際に現場に行かなくてもほぼ正確な状況をつかめてしまう。確かにこれは登山の不確実性を排除し安全性を高めるうえでは重要な役割を担ってくれるとは思う。しかし、これに頼り過ぎては前述の通り山登りの本来の楽しさ、”未知への冒険”を色褪せさせてしまうのではないだろうか。
僕は決してアナログ至上主義ではないし、新しいテクノロジーはどんどん活用すべきだと思っている。しかし、流されて本質を見失いたくないとも思う。幸い僕はまだSNS情報網やGPSなどが手軽に利用できない時代から山に入っていたので、未知への冒険の楽しさを知っている。
そう、今となっては御嶽山でそれを味わうことが難しくなってきた。そんな折、ふと昔の記録を読み返していたとき、13年前の記録に目が留まった。それは御嶽での沢登り熱が最高潮だった頃の記録で、お盆休みを利用して兵衛谷の支流、尺ナンズ谷を遡行し、継母岳に詰め、下山に藪漕ぎで摩利支天北西尾根を下山した時の記録だった。
あれは今でも記憶に残る”未知への冒険”だった。尺ナンズの遡行記録はほとんどネット上でも見つけられず、頼りにしたのは和合さんの話と写真。そして若かった僕らはそれだけでは飽き足らず、まだ未踏だった継母岳と摩利支天の先に続く北西尾根をまとめて計画にぶち込んだ。遡行も下降も気の抜けない計画でワクワクとドキドキでいっぱいだった。そしてもちろん不安でいっぱいだった。

と、ずいぶん前置きが長くなってしまったけど、今回そんな懐かしい記憶をたどって、そして静かな御嶽山を楽しみたくて、まず間違いなく人に出会うことはないであろう北西尾根から摩利支天山を目指すことにした。もちろん積雪期ははじめて。きっと誰かは登ったことがあるだろうし、そんなに困難なルートではないであろうと予想はついていたけれど、初めて訪れるわくわく感はあった。

展望台からこれから登る北西尾根が良く見える

いつも通り雪が緩む前に稜線を登って降りる計画で早朝スタートにした。とはいえ、6時台ですけど(笑)登山口に着くと平日なのに2台すでに車が停まって出発準備をしている。僕も早々に身支度。今回はトレースが無いのと融雪が進み特にスタート直後はズボズボだと当たりをつけた。湯ノ谷右岸の尾根に取りつき登山スタート。ワカンを履いていてもズボる。しかも出だしがわりと急。気温が高いのも助けて汗だくになって登った。標高2000m付近までは結局ワカンで通すことになった。ようやく雪面も締まりアイゼンに履き替えるとすぐに森林限界を迎えた。以前の訪問時にはひどい藪漕ぎを強いられた尾根も積雪のおかげですっきり快適。おまけに眺望も最高。やはり積雪期に登る尾根だ。尾根が北向きから北西向きに屈曲するあたりは風の通り道で雪庇が発達していた様子が随所に見受けられた。厳冬期は風が酷いのだと容易に想像できる。


森林限界に出た
ところで以前来た時には旧道の証らしき道の形跡や慰霊碑などを見つけた。今回も雪が切れた岩場に見覚えのある場所があって近づいてみるとやはり以前見つけた慰霊碑がそこにはあった。静かに手を合わせてその場を後にした。
摩利支天と継子岳越に北アルプスが良く見える
尾根は快適そのもの。景色も良いし傾斜もほどほど。ただ一向に摩利支天が近づかない。見えてると思いのほか遠くなる現象。とはいえ焦る必要はないのでのんびりと誰もいない静かな御嶽の尾根歩きを満喫した。
なだらかな雪稜が続く。まるでスキー場。
摩利支天に近づくと岩場がでてくる。雪もついていなくてアイゼンで岩の上を歩く。山頂直下では3mほどの岩登り。とはいえ傾斜もゆるく簡単。あっけなく摩利支天の山頂にたどり着いた。時間もはやいこともあってここも誰もいない。しばしのんびりと摩利支天山の山頂を独り楽しんだ。

摩利支天山頂
山頂を後にして尾根から見えていて気になった、兵衛谷の最高所の滝にもせっかくなので立ち寄ることにした。尾根の適当なところから源頭目指して斜降する。標高2750m日本最高所の滝はしっかりとした氷瀑になっていた。12月の初旬に凍り始めたそれを見に来たことがあったがそれよりも立派だった。おそらく季節柄融雪と凍結を繰り返し、この季節に立派に成長したのだと推測できる。あらたな発見だ。

最高所の滝の氷瀑
一通り滝を楽しんだ後は下山、とはいえ登り返し。時間も余裕があるので通常ルートの様子も確認したく、摩利支天乗越を越え、五ノ池に下った。森林限界までのアルパインエリアはまだかろうじて締まっており、緩む前にと、すばやく下った。樹林帯はトレースもあるのでアイゼンを外しさらに加速して下る。あっという間の下山だ。
乗越からの景色がやっぱり好き
短い時間ではあったけどコンパクトにいろんな要素を楽しめるこのルートは春の御嶽を楽しむルートとして素晴らしいルートだと思う。またコンディションによっても雰囲気は変わりそうだけど何度か訪れてみたい。こうなると他の尾根もきになるな。次は兵衛谷側の尾根にトライしようかな~。
 

2022年11月28日月曜日

白山の名瀑・百四丈の滝(無積雪期)初訪問

2022年 10月19日(日帰り)

メンバー ホラ・くま


もう何回目やねん!とつっこみが入りそうなくらい今年はよく通った百四丈の滝。今年だけでも積雪期に3回、そして今回初となる無積雪期!本年4回目です、はい、大好きすぎでしょ(笑)そう、そんなに足を運びたくさせるほど魅了してやまないのが百四丈の滝なのだ。

もちろん今回も相棒はネイチャーフォトグラファー・ホラ!こんなマニアックな山行に付き合ってくれる山友は彼だけだ(笑)

さて、無積雪期の百四丈滝アプローチは2通り。積雪期同様尾根から滝つぼに降りる方法。もう一方は沢通し。尾根からのルートはやぶ漕ぎがひどいようなのでできれば避けたい。そして沢通しで行くことで百四丈滝だけではなく、前衛の黒滝にも出会うことができる。というわけで迷わず沢通しで向かうのであった。

ただ今回、落とし穴が。新岩間温泉までの林道が災害により通行止めとなっておりただでさえ新岩間温泉からの丸石谷林道も長いのに、これにゲートから新岩間温泉までのロードも合わせると輪をかけてさらに長くなる。これなら尾根通しのほうがずいぶん短そう。でもここは沢ヤの端くれ。意地でも沢通しを選ぶ。

そして長いアプローチにはつきもののE-Bike.今回もその力を借りることに。おかげでめちゃくちゃ時間短縮になったことは言うまでもない。もう僕らの山行には必需品だな(笑)

結局新岩間温泉を通り過ぎ、楽々新道取りつきもさらに1kmほど超えたところまでアプローチできてしまった!これがなければたぶん1泊確定だと思う。

林道は長い。ところどころ谷が氾濫し大岩がごろごろ転がっており、この夏の水害の規模の大きさを垣間見た。

林道も終わりやっとで入渓点にたどり着くころには日も高くなり始めたが、入渓点には霜が降りている。いかにも寒そうな雰囲気。稜線では雪も降ったような寒い晴れた朝なので谷の中も霜が散見された。

入渓点の堰堤

最初に2本堰堤を越えればあとは河原歩き。まーまー長い。そしてつまらない・・・。たまに見る魚影にテンションは上がるがもちろん竿など持ってきてもいないので黙々と上るのみ。

途中で見つけたハート貫入に萌える


谷が狭まり側壁がせりあがってくるとやっとでゴルジュっぽい地形に突入した!そこからの展開は早かった。前衛となる多段滝を左から小巻にするといたるところにマーキングや虎ロープが散見された。巻き道をそれ開けた小尾根に出ると眼前に立ちふさがるように幅10m×高さ40mはあろうかという黒滝が現れた!

ゴルジュの入り口滝


黒滝


迫力もさることながら端正なその姿に思わず「かっこいいー!!」が喉をついて出た!ほぼ下調べ無しのオンサイトで来ているので写真などでも見ていなかったことも助けてその姿に感動!!やっぱ沢通しが正解だね。

とはいえ、ここがゴールではない。これを越えなければ目当ての百四丈の滝にはたどり着けない。ここからの巻きは斜度も増し大きな巻きとなった。灌木はしっかりしているので高度感はないもののトラバースラインでは滑落の危険もある場所もあり通過に慎重を要する箇所があった。僕らはチェンスパ履いてたおかげでノーロープで沢底まで降りることができた。

黒滝の落ち口


黒滝の頭に出るとまたも沢は平凡になる。しかしそこから程なく滝のしぶきを見る。おーついにきたかー!近づくにつれそれははっきりと姿を現した!!冬には決して見ることができない立ち上る水しぶ。そしてまっすぐに落ちる水柱。もうこらえきれません「きたーーーー!!!!」思わず雄たけびを上げたくなるその光景は僕が想像していた何倍も美しく、力強く、そして神々しかった。

近づいてきたよー!


嬉々として滝つぼまで駆け上るようにたどり着くとそこはもう氷の世界が始まっていた。透明の薄氷でコーティングされた石はツルツルとよく滑る!!油断するとずっこけて骨折するのではないかというくらい危険な河原が一面に広がっている。

きたー!百四丈!


しかしそんなもので僕たちの情熱の炎を鎮めることはできないのだ。上にいったりしたに行ったり裏に回り込んだりもうありとあらゆる角度から嘗め回すように滝を堪能した。

氷の滝つぼの始まり!?

裏見の滝のスケールが半端ない

日が当たるまで2時間滞在したぞー!

おなか一杯になった僕たちは百四丈の滝を後にした。そしてながーいながー帰り道をかえりましたとさ。兵たちが夢のあと・・・・。次回は泊りでこよっと!





【備忘録】大井川西俣塩見沢

2022年10月2日~3日

大井川西俣塩見沢(1級下?)

メンバー:ヤマP&くま


 毎年恒例、ヤマPと秋の泊まり沢企画。お互いもう四十路目前にさしかかり沢に求めるものも変わりつつあるわけで・・・。そんなわけで今回は沢も短めで難しいところが無いゆるい沢をご所望。計画時まだ登ったことが無い塩見岳へ詰め上げる沢はないかな~とっ見ていたところよさげな沢を発見。先月訪れた赤石沢のさらに上流、大井川西俣塩見沢。長大な大井川の源流の一角をなすエリアだけに期待が膨らむ。さて、今回はどんな沢旅になるのかな!?


いざ、塩見岳へ!

前日まで西穂独標2日間のガイドで西穂山荘にその時は朝は冷え込み霜が降りていた。今回もきっと寒くなるだろうと覚悟してAM3時に小坂を出発。鳥倉林道の駐車場までは小坂から3時間半の道のり。南アルプスになかではまだ近いほうだな。駐車場にたどり着いてびっくり!ゲート直前の第1駐車場はおろか2kmほど手前にある第二駐車場も満車そこに至るまでの路肩にも隙間なく駐車されている。塩見ってこんなに人気の山なん?と思うほど。

かろうじて第2駐車場(とはいえ路肩)にねじ込み何とかセーフ。今回最大の関門は辛くも突破できた。第2駐車場から登山口まではほぼ舗装路でゆるやかに登り道。片道1時間強でたどり着いた。登山口にはチャリがたくさん。やっぱりここも時短のためにはチャリが有効ってことだね。まぁ1時間くらいなら歩いても別に苦では無いけど。



登山口から三伏峠までは樹林の中をひたすら登る。天気はいいが気温は低く息を切らしながら登るにはちょうど良い気候。かいた汗もすぐに冷えて気持ちがいい。
三伏小屋にたどり着くと小屋閉め作業で忙しそうにしている。夏山シーズンの終わりですね。

三伏小屋からは目指す塩見岳がようやくお目見え!このまま稜線を歩けば最速でたどり着けるけどそれでは面白みに欠ける。そう、今回は沢からの塩見がテーマ。まずは明日登る沢まで下らなければならないのだ。ピークハンターからしたら、せっかく上ったのにわざわざ沢を下って、さらにまた沢を登って頂上を目指すとーっても非効率、かつ、無駄な行程。しかし、この無駄と非効率にこそ意味がある!それが沢屋なのです。

そんなことは当たり前なので何も気にすることは無くすたすた三伏沢を下りに掛かる。最初は水場に向けて整備された登山道、その後も登山道の名残を辿り、もともと三伏小屋があったとされる場所を過ぎれば、あとは沢通しにすきに下るだけ。



それにしても道中はゴミをよく目にする。しかも小屋跡を通り過ぎてからおびただしい量の林業廃材や昔のキャンプで出たゴミが散財しているのが目につく。せっかく美しい沢なのになんだか残念な気分になる・・・。

1時間も下ると権右衛門沢との出合に到着した。いよいよ大井川西俣の源流。わくわくしながらたどり着いたそこは、想像とは大分違った。空中には集材用ワイヤーが張り巡らされ、それが朽ちて落ちたのか延々数キロにわたってワイヤーが沢床に散乱。ワイヤーが付いたまま放置された集材機、いたるところにある小屋掛けの跡や一斗缶などなど。規模のデカイゴミがあちこちに。もー、源流の雰囲気は丸つぶれだ!



これは帰ってから調べたのだけれど、このあたりは昔から林業が盛んだったので下流には拠点となるような集落がありそこから随分刈り込んでいったようだ。にしても、施業しないならちゃんと片付けた方がいい。うん、絶対その方がいい。小坂でも森林鉄道が廃線になってその廃材が山中に残ってるけど、その比じゃない。これはひどい。

げんなりしながらも来てしまったものは仕方がない。これはこれと受け入れたうえで、気を取り直して。ここからは今夜の宿をみつけるためにぐんぐん沢を下る。計画段階で目をつけていた広河原にたどり着くと、なんとそこはキャンプ場だった!と、思うほどそこら中に焚火の跡や石組みした跡が随所にみられる場所にたどり着いた。沢はイマイチだけどキャンプサイトは超一級品。薪は豊富、地面はフラットで苔むしているし、水場は近い。これほど恵まれたサイトは今まで泊まったことが無い。




さっきまでの下がったテンションも、最高のテンバのおかげで爆上がり!どこもかしこみお目移りする極上サイトの数々。もちろん他に誰もいないので選びたい放題♪
しっかり吟味すること20分。ここ!と決めた場所は20平米のリビングと、キッチン(かまど)付き、さらに薪一晩保証済みの超優良物件。最高の一晩を過ごせたことは言うまでもない。

空けて二日目。5時起床で焚火を起こし直し7時までのんびりした。いよいよ本番、塩見沢を詰めての塩見岳へ出発!本流を出合まで戻り塩見沢に入るとすぐにイワナが目につく。一段登るごとに魚影は濃くなり、小さな滝の滝壺にはうようよ泳いでいる。どうやら産卵のために集まってきている様子。やはり腐っても大井川源流。イワナはたくましい!

塩見沢の渓相はいたって平凡。滝らしい滝もなく、ぐんぐん高度を上げていく。詰めの目標である天狗岩と本峰のコルにたどり着くためにはいくつかの分岐を正確に読み解かなければいけない。地形図を見ながら登っていく。しかし、案の定やってしまった。地形図上はうっすら沢地形になっている二股に気が付かず見過ごし、水流のある沢を詰めた結果、コルに向かう沢を通り過ぎ随分さかのぼってしまった。ここで尾根を越えて正しい沢に戻ることも考えたがすでに濃い藪に阻まれ尾根を横断するきにはなれない。仕方がないので天狗岩から分岐する尾根に取りつき塩見小屋側に伸びる縦走路を目指すことに。ハイ松が濃くトラバースもやっかい。気合で漕ぎきりなんとか露岩に乗るとそこはすっきりした尾根。尾根を少し上ると目標にしていた地点に難なく出ることができた。そしてこれにて本日の遡行は終了。
あっけない沢登りだった。




稜線はいつの間にか曇り空、吹く風も冷たく、秋が深まったことを感じさせられる。
さて、ここからはピークハント。荷物をデポり、塩見岳山頂を目指す。

天狗岩を登って目的地だった本峰とのコルにようやくたどり着く。上から見てみるとすっきりとした沢。でも下の方にいくにつれ樹林も濃くなり、結果ここを詰めても藪漕ぎになったのかな、と採らぬ狸の皮算用(汗)あとは本峰の岩場に取りつきサクサク登ればまずは西峰。そこからちょろっと歩けば最高点の東峰にたどり着いた!




当たり前なのだが、普段御嶽から見るよりも富士山近くがめちゃくちゃよく見える!やっぱりわかっていてもテンションがあがる。そして景色より何よりヤマPがわざわざ山頂で食べようと持ってきた粉々のわさビーフが最高だった(笑)長居したいところだけど明日からの仕事(3時発で空木岳)が待っているので下山も急ぐ。山頂から三伏峠まではまぁまぁある。しかもわりとアップダウンもあるし。三伏峠につくころにはそれなりにヨレたけどまだまだヨレヨレではない。てなわけで三伏峠からの下山は駆け足!しまいには林道は全RUN(笑)結果的にこれのおかげで翌日の空木岳は大変だった(苦笑)

駐車場に着いたのは15時。なんとか許容範囲内だ。なんとか予定通り(?)の旅ができたけど赤石沢を経てからではこの行程ですらかなりゆる旅に感じてしまう。しかしながら南アルプスの一角を沢から山頂に詰め上げるという過程を愉しむことはできたことと、沢泊でのんびりできたことは満足した。きっとまたこんな沢旅をするんだろ~な。ゆるーく沢泊、はまりそう(笑)



2022年9月21日水曜日

【備忘録】大井川赤石沢 最終章”偉大なる赤石沢”

赤石沢生活三日目、夜中に目が覚め、寝床から空を見上げるとまだまだ月が高く上っている。時計を見ると午前3時。4時起床予定ではあったけれどパッチリ目が覚めてしまった。出発も早いことだし火を起こし直しながら白湯をすする。しばらくするとホラくんも目覚め朝げの支度。昨日仕込んだイワナのあら汁(通称ホラ汁)を温め直し、米を炊く。焚火は灯りにもなるし暖も取れるし調理もできる。まったくもって沢には無くてはならない存在だ。ホラ汁をすすり体に熱が入る。さぁ3日目のスタートだ。朝食を済ませ撤収し出発する頃にはあたりはすっかり明るくなり6時より百間洞の遡行を開始した。いよいよ詰めだ。百間洞は水量もぐんと減りはしたもののまだまだ源頭の雰囲気ではない。小粒だが端正な滝が次々と出てくる。相変わらずイワナもまだまだ濃い。

最初の3連瀑は右巻き

どの滝も難しくはないけどまだまだしっかり沢登りさせてくれる。滝と滝の感覚が狭まり行動が急激に上がっていくのを感じられる。いよいよ終盤だ。ゴルジュとまでは行かないまでも谷が狭まり側壁が立ち上がり始めた。いよいよ最後の滝のお出ましです。百間洞最後にしてこの遡行最後の滝は高さもあり立派な釜を持つの端正な直瀑。思わず見惚れてしまう美しさだった。まさにこの遡行をしめくくるにふさわしい見事な滝にしばし撮影タイム。ちなみにこの滝壺にもちゃんとイワナが居た。

最後の滝(落差15mほど)

この滝はさすがに登れないので右のルンゼから上がり絶妙に続くバンドを使って小さく巻くことができた。ただルンゼからバンドにトラバースする出だしの濡れた岩が滑りそうで気持ち悪い感じだったが、実際に足を置いてみると見た目以上にフリクションが利き難なく行けた。もちろん注意は怠らない。滝上部からやっとで源頭の雰囲気。標高は既に2200mを越えている。まさかとは思いながらも流れの中を観察しているとやはりイワナがいる。いったいどこまで生息しているのか。

そしていよいよクライマックス。谷は大きく開け、振り返ると南アルプスの稜線が目線の高さに迫ってきた。あたりも背の低いダケカンバの樹林になり紅葉(というよりは枯れている)の林が続きいっきに晩秋の雰囲気になった。7:30ついに百間洞山の家にたどり着いた!そしてこれで赤石沢を詰めきったことになる。達成感とともに得も知らぬ悲しみにも似た感情が湧いてきた。あーこれで終わってしまったのか、赤石沢。でもそんな感傷にひたっている余裕はない。なんせここからがある意味最も体力勝負な行程。この最低暗部から縦走路に復帰し赤石岳山頂を踏まなければ下山することさえ許されない。沢装備を解除し遡行者はこれにて終わり、今度はピークハントの登山者に成り代わるのであった。

百間洞山の家に躍り出た!


百間平までの上りはとにかくしんどい。2日間の疲れが蓄積しているため足取りも重い。ただ救いなのが背後に広がる雄大な南アルプス南部の山並みの美しい景色。立ち止まり振り返り元気をもらってまた登る。その繰り返しで百間平にたどり着いた。自身初めてとなる百間平は控えめに言っても最高の場所!背後には南の南アルプスの山並み、眼前には赤石岳と荒川三山(主に前岳)の荒々しい山並み。朝の光に照らされるその景色は神々しさすら感じる。景色を楽しみゆったりとした尾根道を歩きながらながらこの度の余韻に浸る。あーなんたる贅沢な時間だ。この雄大な景色、ネイチャーフォトグラファーが黙ってはいません。後ろに行ったり前に行ったり。疲れを感じさせないフットワークでシャッターを切りまくっている。ホラくん、君はもうプロだね。

荒川前岳 Phot by HORA

縦走路を振り返る Phot by HORA

百間平を過ぎればいよいよ赤石岳山頂部への取りつき。ガレた大斜面をトラバースして回り込み、最後に一気に200mを登る。休み休み着実に高度を稼ぎ、ヘロヘロになりながらもついに山頂に到着した!いやーしんどい、これでもかってくらいしんどかったー!頂上ではガスに包まれ景色は楽しめなかったけどもう十分全て楽しみましたから、もう欲張りません、というかおなか一杯です!!!もう勘弁してください。

赤石岳山頂にきたー!

山頂に立った、つまりこれで登りは終了。椹島(牛首峠)から出発して初めて下りに転じる瞬間。これでようやく下山路につくことになる。しかしこの下山も長い!標高3140mから1100mまで一気に2000mの下り。10:40頂上をあとにし下山開始。足もヨレヨレだけどガンガン飛ばす。結局椹島の登山口に着いたのが14時10分だからちょうど3時間半で下ったことになる。随分とばしたなー。登山口から牛首峠まではわずかな上り。もうほぼ無心で歩きやーっとのことでチャリのデポ地にたどり着いた!

ただいまー!

くたくたよれよれなのでしばし大休止。今は満足感に浸るというよりは疲労感に沈む感じ。20分ほど休んでようやく生気を取り戻し車に戻るべく16kmのチャリライドをスタートした。帰りは下りなのでらくちん♪とは言えないほどアップダウンがわりとあるしやっぱり疲労が積み重なっているので序盤こそ爽快だったが終盤は体のバッテリーも、E-Bikeのバッテリーも底を尽き、残り8%というところで何とか沼平ゲートに戻ってくることができた!これにて完全達成!!!達成感半端なーい!!!!

帰りは白樺荘のぬるぬる温泉で汗を流し、のんびりと小坂に向けてドライブ。結局家に着いたのは23時だった。まぁ遠いわ。

2泊3日、といっても前乗りしているのでほぼ3泊4日のこの沢旅はなまりがちな僕にとっては近年まれに見ぬ大冒険、そして見分を広げる価値ある時間となった。今回相棒を務めてくれたホラくんの活躍があってこその成功、そして遡行内容の満足感。感謝しかない。

赤石沢を全身で文字通り”味わい尽くし”その偉大さをビリビリと感じ魂に刻み込むことができた。後何度こんな魂の震える体験ができるかわからないので今回の遡行を丁寧に備忘録として残しておきたい。そんな思いで4章に渡る長編備忘録にってしまった。

ありがとう!赤石沢!!!また来ます!?








【備忘録】大井川赤石沢 その3”IWANA HEAVEN"

 2日目の夜明け。昨夜は思いのほか寒くなくハーフレングスのシュラフ(モンベルの#3)でも全く問題なかった。今日も朝から快晴!焚火を起こしゆっくり朝支度。そう、今日は最も楽しみなイワナの桃源郷、改めIWANA HEAVENに突入するのだ!!すでにその片鱗は昨日からも見受けられていたのだが、後々振り返ってみるとこの先のそれには到底及ばない、まさに天国が待っているとはこの時は思いもよらなかった。

さぁ2日目もはりきっていこー!
今日は距離的には3日間で最も短い行程。出発から竿を出しいてみる。淵という淵、ポイントというポイントでイワナが上がる!前後には比較的大きな滝があってそれぞれが魚留になっているのではないかと思うが、その区間ひとつひとつに居るイワナの密度が濃い!そしておもしろいように釣れる。しかしながらここはまだまだ核心部真っただ中。しばし休戦しここからは谷と向き合う。
これぞ赤石沢!見渡す限り赤い岩だらけ

相変わらず巨岩に阻まれすんなりとは通れない。無限ボルダリング絶賛継続中。遡るにつれ岩の赤さが目立つようになる。そう、この沢の由来となったラジオラリアと呼ばれる岩石で谷全体が構成されるようになってきたのだ。水にぬれた部分の赤さは際立ちレンガのような色合い。対照的に済んだブルーの釜との共演で異世界間が半端ない!

大ゴルジュの入り口

ネイチャーフォトグラファーはその自然の造形にくぎ付けとなり歩みは牛歩のようになった(笑)とにかくこの沢は見どころが多すぎて困る。やっとこさ大ゴルジュに到着しふと正気に戻る。まだ核心部は終わっていなかった!

2本の支流のうち右を登る


とりあえずゴルジュの正面突破は難しそう。セオリー通り枝沢からの大高巻に入る。2本ある枝沢の右側に取りつき登り始める。適当なところで右の斜面に取りつきルートを探るとしっかり踏まれた踏み跡が続いていた。崩落地を横目に見て斜上するがどんどん切り立っていき、しまいには垂直に近くなる。さすがにここはロープ出さないとまずそう。ただこの先傾斜が緩むようにも見えないのでとりあえずもと来た道を引き返し枝沢に戻った。

行き詰ったポイント

さて、仕切り直し。谷筋はヌメヌメにつき、いったん左の尾根に出て谷沿いに高度を上げる。ここも決して楽ではなく、木登り系の高巻きとなった。程よいところでまた枝沢に復帰し、少し上ると右の尾根に取り付けそうなのでそのまま尾根へと取りつく。そこからは比較的平坦で踏み跡も明確になる。尾根をトラバース気味に巻くと途中1本沢状の地形があり、降りるか迷ったがもう一本向こうへ行こうということでなおも進むと広い沢状地形が。眼下には川原も確認できた!よし、これで何とか歩いて降りられそう。

高巻きから沢に復帰すると目の前に美瀑が!

高巻きには1時間を要した。お疲れさん!これで核心部を抜けたことになる。ほっと一息ホットコーヒーで労をねぎらう。目の前の枝沢の美瀑が目を楽しませてくれる。さて、ここからがお楽しみ♪休憩もそこそこにホラくんは早速竿を出している。獅子骨沢までは一息。この間わずか200mそれでもやはり魚影は濃い。ロケーションの良い獅子骨沢の正面で昼休憩!もちろん今回もイワナを釣りお刺身にしていただく。う~ん最高!!

職人ホラのライブキッチン♪

昼ごはんをのんびり食べて、ここからは釣りモード。もうこれが面白いほど釣れる!しかも今までの比じゃないほど釣れて一投必殺状態。なんだか釣りがうまくなったのではと錯覚してしまうほど良く釣れる(もちろん全部リリースしてますけどね)しかも尺は行かないまでも良型ばかり。(ホラくんは34cmを釣った)

爆釣で楽しさ爆発だー!

この分だと釣れすぎて進めないのでいったん竿を納め先に進むことに。ほどなくして赤石沢最大の大淵と目される巨大な釜にぶち当たる。ここは前評判でイワナのパラダイスだということを知っていたので期待してのぞき込むと、そこには想像をはるかに超える光景が!!もううじゃうじゃ。しかも大きいのがたくさん。きっと産卵のために集まってきたのかな、と思うほど大きい魚がいーっぱい!いっぱいい過ぎでなんだか逆に竿を出す気にもなれないのでここは早々に通過することに。巻は小さく。左壁を落ち口付近までへつってそのまま樹林に突っ込み2段ある滝を二つまとめて高巻した。

イワナがゆうゆうと泳ぐ大淵

今夜の泊り場の百間洞出合いまではもう直線距離にして500m程度。よし、これならということで釣り再開。今度は今夜の獲物を釣りあげるための釣りタイム。お目当ては25cmオーバーのオス。マナーとしてメスは食べないことにしている。やっぱり卵を持っているのでそこらへんは配慮しないとね。二人とも次々と釣り上げる。しかしやはりここはIWANA HEAVENえりすぐりの4匹があっという間に釣れてしまった!

獲った魚を”撮る”

裏赤石沢出合まではそこそこ登る滝があり上流部とはいえまだまだ手が抜けない。最後のCS滝を越え裏赤石谷出合を過ぎてほどなく奥赤石沢と百間洞の二股に到着。今夜はここにて行動終了。こちらもナイスなテンバが出来上がった!夕食は良型のイワナ4匹を使ったフルコース。刺身から始まり、タタキ、炙り、天ぷら、あら汁。(ほぼ全てホラくん作)もうすっかりイワナ腹!イワナで腹いっぱいなんてなかなか無い!幸せに包まれながら今宵も焚火をおともにごろ寝。もう社会復帰できそうにないなー、そう思わせてくれるほど充実した二日目に幕を閉じたのであった。

ホラシェフ謹製・イワナのタタキ!絶品でした!!



最終章”偉大なる赤石岳”へ続く



【備忘録】大井川赤石沢 その2”核心部突入”

入渓前の計画段階で、今回の遡行を大きく分けて4パートに区切っていた。まず下流部として入渓点~北沢出合。大きな淵やゴルジュが連続し、水量が突破のキーになる。続いて北沢出合~獅子骨沢出合までの中流部。こちらは滝の登攀や高巻きが肝となる。そしてお楽しみイワナの桃源郷と目される上流部は獅子骨沢から上流で、最後の二股を百間洞に進路をとり、稜線に詰め上がるまでとした。そして最終区間で鬼門の下山路。下山というより、もはや縦走といっても過言ではない。百間洞山の家から赤石岳山頂を踏み、東尾根を椹島まで下る。登山ならこの区間だけで丸1日使うところ。

 さて、そんな4つのパートを2泊3日で抜ける計画。しかも今回はイワナの桃源郷でイワナ祭り(!?)がサブテーマ。そのため僕たちは初日にがんばって距離をかせぎ、核心の中流部を片付け、2日目は短い行程でぞんぶんにイワナと戯れ百間洞出合に宿泊、沢中2泊で満喫し、その代償として最終日は百間洞を登り、さらにその後地獄の下山を心行くまで味わうという距離的にはまったくもって不均等な計画を立てた。

さて、少々無理と無駄(あそびごころ♪)のあるこの計画にのっとり北沢出合の休憩を終え、いよいよ核心部へと突入していく。先ほどまでの明るい渓相から一転、谷は急激に狭まりゴルジュ帯となる。滝も次第に高さを増していく。そして当たり前だけど取水堰堤を過ぎたので先ほどまでの水量と比べて格段に多い!滝も迫力が違う。

高さは無いがものすごい水量の豪瀑

いくつかの滝を越え、谷が一段と狭くなった。谷はかくっと左に曲がり側壁はそそり立ってきた。なにかくるぞー、そして曲がったその先にいよいよ落差20mはあろうかと言う巨大な門の滝が登場した!!巨大チョックストーンの左右から水が勢いよく吹き出し下部で立体交差している。滝つぼも恐ろしく深く前衛滝を伴い2段構成の釜。上から見ると虹がかかって見えた。しかしまぁ、ものすごい迫力だ!

門の滝を俯瞰するポイントに出た!

文字通り門のようなこの滝。これを突破しないことには先には進めない。この滝越え方は二通り。右岸の場合は草付きバンドを登り落ち口めがけてトラバースする。もうひとつは左岸の草付きを斜上し滝の頭に出る方法。左岸は見るからに支点となりそうな木が無くノーロープで突っ込むほかなさそう。一方右岸のバンドは立って見えるけどなんとかなりそうな角度。岩にもクラックがあるのでカムは効きそう。ということで安全を取って草付きバンドから攻略することに。右岸から枝沢が合流するバンドの基部に行くまでもきわどいトラバース。ホラくんのリードで登攀開始。こともなげにホラくんはスイスイ登っていく。しかし最初の支点がとりずらそう。結局後から聞いてもまともな支点は5mほど登った灌木くらいだったよう。バンドのトップまで登りピッチを切った。僕はセカンドなのでらくちん♪ユマーリングで登るのだ。が、しかし今回使用したロープが7mmだったため、アッセンダーにタイブロックを使用して登り始めたらストンストン落ちる。そう、タイブロックは8mmまでが対応範囲だったのだ(泣)結局アッセンダーとしての意味は全くなく、ほぼ確保無しで登る羽目に。登った感触として草付きだけに足場が見極めにくく適度なスタンスが乏しいのでリードで登るには灌木までが核心。そこまではカムの利きも悪くほぼ確保できてないのと一緒なので要注意。

草付きバンドを登る

バンドの頭から落ち口上をトラバース。こちらもホラくんがそのままロープを引っ張る。落ち口上に降りるところが悪い。全体的にぬめぬめで草付きバンドよりリードは悪かったと思う。セカンドはお構いなしだけどね。

落ち口上にある小滝めざしてトラバース

この登攀に1時間を要した。まず一つ目の、いや、最大の核心を突破できて一安心。小滝の上で大休止。ここからは間髪入れず次々と難所が続く。続いて登場したのが巨岩で構成された洞穴を伴う10m滝。ここはエイドクライミングで越える。まずは空身で僕が突っ込む。洞穴内部に垂れ下がる残置スリングを利用し1段上がる。真っ暗でヘッデンを出したいところだが足の感覚だけでもステップは探ることができた。そこから人一人通れる穴を抜けて外に出る。外側に出ればあとは簡単と思いきや最後の抜けが悪い!外傾の大岩に阻まれ一手が怖い。リングピンでランニングを取り、思い切ったムーブで乗り越えた。後はいったんロープを巻き取り外側から荷揚げをした。
右の洞穴の中をエイドで登った

門の滝と比べればこちらはずいぶん楽しいアトラクション。とはいえ腕力系の上りで体力は容赦なくえぐり取られた(笑)そしてなおも間髪入れず大ガランという崩壊地と巨大チョックストーンで構成された滝群が現れた。もう体力ありません。もう勘弁してください。休憩がてらホラくんが試しに釣ってみるとなんとHit!ここでも釣れるのか―!!これは夕飯に期待が持てそう。とりあえず釣れたイワナはリリースして大ガランを高巻くことに。右のガレを登り落ち口へむけてトラバース。ここはさすがに滑りだしたら止まらない。落ちたらやばそうなのでホラくんはチェンスパ、僕はバイルを出して慎重に通過した。

大ガラン。奥に見えているチョックストーンの滝を右から越える


ここの先には大ゴルジュが待ち受ける。しかしそれわ越える体力も時間もない。今日はここでギブアップ。しかもそこには優良物件があったのでここ以外に泊まる選択肢がなかったのも行動終了の決め手の一つ。
15時、遡行打ち切りでここからはいかに快適に過ごせるかに全力を使う。薪の方はずいぶん豊富にあったので30分ほどで十分な量を確保できた。魚の方はというとこちらも爆釣!えりすぐりできるほど釣れたが今夜はケイチャンもあるので2匹だけ頂くことにした。
タープを張り焚火を起こせばそこは最良のキッチンでありリビングであり寝室となった。ホラシェフのイワナの刺身、天ぷら、そして持ち込んだケイチャンにと最高の晩飯をいただいた。晩飯が終わるころにはあたりは真っ暗、こうなると睡魔が襲ってくる。焚火の前でシュラフにくるまりごろ寝。これも沢の魅力のひとつなのだ。月明かりがまぶしいくらいの夜だったけど昨夜もほとんど寝ていなかったことも助けて眠りに落ちるのに大した時間はかからなかった。

一等地の1LDK

その3”IWANA HEAVEN”へ続く