2016年10月1日土曜日

備忘録:上越・湯檜曽川本谷遡行の巻

秋雨前線のクソヤロー!と毎日叫び続けています。でもその声は彼には届かないようです。
でもね、秋遠征に行くタイミングはここしかないって踏んだんです。
だから行ってきました!雨の中、遠き群馬はみなかみの山奥、湯檜曽川本谷まで。
今回も学び多き旅となったことを感謝してます。そんな旅路を備忘録にまとめておきましょう。


やっぱ沢は晴れの日だよね~

例年好天率の高い9月末。ところが今年”荒天”率が高く、出発直前まで今回の遠征を辞めるか否か、天気予報に一喜一憂しながら苦心していました。しかし天気図の動きを見る限り前線は南下し大陸から次第に高気圧が覆うという日が1日だけある。これにかけよう!ということで小坂を出発した。今回はいつもの貝山氏は残念ながら不参加となりヤマピと僕の二人旅。登攀特攻隊長を欠き向かう谷には登攀要素の強い個所が多々・・・。いやはやどうなることやら。


大地の裂け目に滝が落ちる。吹割滝
初日は移動だけなので群馬観光♪ヤマピが探してきた観光地・吹割の滝を夕闇&驟雨の中観瀑。帰りに沼田とんかつ街道なるエリアを発見し”ゆき藤”なる名店?でかつ丼を食す。そのままみなかみまで移動し、しなびた地元の温泉に入り道の駅で就寝。
翌日は朝6時に行動開始。結局雨予報にもかかわらず夜の内雨は降っておらず、朝も空は重たいものの雨ではない。「これっていけるんじゃない?」ということで出発準備。
白毛門駐車場に車を回し早速沢装備を身に着け出発。しかし出発と同時に霧雨が降り始める!好天予報を信じなおも進行するも雨は止まず虹芝寮まで来たところでついに雨に負けて停滞。
結局そのままぼーっと雨がやむのを2時間待ち続けたのであった。
しかしここまで来て引き返すのもおっくう雨がやむのを期待し、ビバークできそうなとこまで行くことに。
出発したものの雨は一向にやまない。それどころか強くなる一方。登山道を横切る沢は増水しルートが分からない個所も。ただ渡渉できないほどではなくずんずん進む。武能沢を過ぎいよいよ湯檜曽川への下降ルートへ。ただこの降雨状況では谷の増水は必須。魚留滝ゴルジュは巻く事に。良く踏まれた踏み跡を進むとゴルジュ上にピタリと出た。増水し、雨の降りやまぬ谷を遡るもビバーク適地は見つからず、巻道と谷の出合まで戻りここでビバーク。ツエルトをタープ代わりに張りその下で質素な晩酌と夕食を済ます。たき火の無い夜は間が持たず日も暮れる前に就寝。ただただ明日の好天を祈るばかり・・・。
今回の遡行は雨具が標準!

朝起きた時点で減水していなければ撤退と決め込み朝4時起床。ただ真っ暗で見えない。
テントから這い出し冷たい沢靴に足を通す、「はう!」快感です。やめられませんねコレ。
5時を過ぎるとようやく白みかけそこから30分ほどでようやく全貌が明らかになった。
昨日までの濁りはとれている。そして明らかに減水している。よし、これならいけるということで出発!昨夜の雨で装備はぜんぶビショビショ。てなわけでしょっぱなから寒いので雨具を着こんでの遡行開始です。

入渓からほどなく白樺沢出合を過ぎると本日最初の3m滝。簡単に巻き越える事はできるもののスラブ滝は水線際の直登は難しそう。遡行していくと行く手をふさぐ5m滝を前衛に奥行きを持って3段30m程度の滝が現れる。ここは左岸を一段上がりテラスから3段まとめて巻き上がる。やはり草付には踏み跡がしっかりと残り人気の沢だという事が良くわかる。しかし見上げるとすり鉢の底のような地形。灌木はあるものの高い立木は皆無。きっと雪のせいなのだろう。急なスラブにどこまでも続く草付。これが上越の沢か~!僕たちの兵衛谷とは様相が全く異なるその”異空間”に感動を覚えずにはいられなかった。



3段30mのナメ滝は右から。(左は胸までつかればへつれる)

ようやく”沢登”っぽくなってきた!2日まってようやく辿りついた沢にテンションは上がる。
そして谷が右にぐいっと曲がったところで、出ましたウナギ淵!超メジャー級の光景を目の前にしてもはや観光気分です。ただ、観光気分でいられたのもここまで。
ウナギ淵は想像以上に小さく短い。しかしそれは”深い部分は”の話。真のウナギ淵とはその先まで続いていたのだ。左岸を小巻して沢床に降り立つとそこはまさにゴルジュ。側壁は低く威圧感は無いものの逃げ場もない。時にはまた下まで水に浸かる渡渉に、やはり水量の多さを感じざるを得なかった。「いや~こんなの聞いてないよ!」ってなノリで不安を募らせ進んでいくと水深はだんだん深くなり仕舞には腰までつかる羽目に!この時期、しかもまだ日がさす前の早朝にこのヘツリは堪えます!もはや足はジンジン。手はかじかみしびれてます。

ウナギ淵ゴルジュのはじまりはじまり~

ウナギはどこまでも続くよ♪
ウナギ淵を入口にしてここからは圧迫感の無いもののしっかりとしたゴルジュ帯に変容した。
増水のせいなのかやたら水深が深い。腰を越える渡渉やヘツリを強いられ、早朝の体には堪える。這い上がるたびに足のしびれが激しい。この先が思いやられる・・・。すると淵がぐいっと曲その出口には10m滝が控えていた。登れる代物ではないので左壁を巻気味に登る。
その後もなおもゴルジュは続く。やはり腰上まで水に浸かる個所が何カ所かあり、泳いだ方がむしろいいのではと錯覚するほどの場所もあり。はやくも「もう勘弁して~」という感じ。ヤマピと顔を見合わせ「ここは夏にくるべきやな!」って後悔既に時遅し・・・。

ウナギ淵出口の10m滝は左壁から

なんのかんの言っても前に進むほか僕らがここから”脱出”する術は無く、前進あるのみ。谷幅がさらに狭まりゴルジュの中に10m弱の斜瀑が見えている。右岸のバンドに這い上がり細かいスタンスを慎重に拾いながら登りきる。これはこの一手(歩)が無いとキツイというところに必ずホールド・スタンスがあるものの、もしなければ全く取りつく島の無い代物ばかりだな~というのが序盤の印象。
随分体もひえっひえになりましたところでゴルジュの終わりを思わせる大空間に躍り出た!

細かいスタンスはぬめりもあり慎重に拾う
ここで噂のグランドクロスキャニオン(十字峡)!本谷はぐいっと左に曲り、正面からは抱き返り沢、右奥からは大蔵沢がいっきょに出会うまさに十字峡。ただ、いざその場所に立つと意外と十字な感じが感じ取れないのが残念・・・。そんなことはさておき、十字峡から間もなく抱き返り滝(2段20m)が行く手を阻む。一見して、「うん、高巻こう!」二人の見解は一致しました。みるからにドバドバ増水の水線を冷え切った体で乗り越える事は至難の業、そう本能的に判断しました。
ただ、この巻、かな~り渋かった!一段目右岸より巻き始めるが積雪の影響で谷側に倒れこんだブッシュがとにかく歩きにくい!踏み跡はあるもののブッシュに阻まれ見失う。途中に現れたルンゼを登り適当なところでトラバース、しかしこれまた悪い!ブッシュの切れ間に滑ったスラブ。ここを越えるのが超怖い!確保といえばブッシュのみ。束でつかんで見えない足元になかばごまかし交えてけりこむ。何度もスリップするがブッシュのおかげでなんとか保持。そんな気の抜けない激藪漕ぎトラバースをひたすら続ける。なんとか滝上にたどり着いた時の安堵感と言ったら!緊張と体の冷えからか指先はかじかみ、しびれもある。いや~雪国の沢の高巻きをなめていましたわ。こんなんなら水線際の直登ラインの方が優しかったのでは・・・。またもや後悔先に立たず。でした。

抱き返り滝(2段20m)


ここからはだんだんと滝も大味になってくる。一気に高度を上げていくような印象。3条10mチムニー滝もなんだか2条っぽい、やっぱ増水の影響なのかな。こちらは右岸のチムニーから巻き上がるが詰め上がりのチョックストーンがちょっとやらしい。その後も歩みを進めるとカンテから巻き上がる8m滝などを越え、眼前に10m滝が現れる。これが噂に聞く滝の裏のテラスを滝に打たれながら横切るいわゆる”名所”だな!ひとりテンションを上げる。振り返るとヤマピはずいぶん遅れている。しばらく待つも追いついてこないのでとりあえず偵察兼ねて滝に取りついて見る。やはり前情報の通り、取りついて見ると見事にテラスが横切っているじゃないですか!その瞬間にスイッチオン!レインのフードをかぶりいざ!テラスへ這い上がると予想通りぬめぬめ。飛沫を背中にうけながら四つん這いに近い格好で潜り抜ける。水勢は思いのほか強くはなく難なく渡りきる。ここからは多少立ってはいるもののスタンス・ホールドともに豊富で快適に直登できる♪ただ高度感はなかなかなので緊張はするけどね。後続は念のため確保した。ここでこの谷初めてロープを出した。
水流中の左上するバンドを伝い左壁を直登
ここらあたりから岩質ががらっと代わり赤茶けた岩が現れだす。続いてこちらも名物の赤茶けた岩質の2段20m滝。直登もできるようだが大滝を前に気力温存。ここは左岸の巻道を利用し滝上に簡単に降り立つ。とはいえ雪国の沢特有のドロドロ草付はスリップの注意に余念がない。ゴルジュはなおも深まり途中胸までつかり巻き上がる。ほんとにがっつり濡れる沢です。レインが手放せない!側壁はだんだんと立ってきて、いよいよという雰囲気になってきた。そして谷がグイッと曲がったその先にそれは突如として現れたのだ。湯檜曽川本谷一の大滝2段40m滝。一見すると「50m以上あるっしょ!」というモンスター級の滝。これ登れんでしょうというような威圧感。正直脱力しました。「ここで撤退したら30mロープ1本じゃ帰れないかも・・・。」なんてネガティブにもなりました。
でもねやっぱ行くしかないんですよね。無事に帰るためには。


2段20mは左岸を大巻。踏み跡明瞭。
さて、深呼吸。その威圧感に圧倒されながらも自分を律して大滝と対峙する。
四方八方から降り注ぐ水流が行く手を阻むがステップはしっかりとしているし、ぬめりも気にならない。取りついてみて初めて「行けるかも!」1段目を登り切り2段目はくの字に大きく曲がっている。水線際の突破はほぼ不可能。活路を見出すべくオブザベーション。
すると少し枝沢が目に入る。ここにあがるのがどうやらセオリーらしい。目をやるとうまくバンドが続いている。ただぬめりが怖い。じわりじわりと慎重にトラバースすると特に難しい個所もなく難なく灌木帯まで抜ける事が出来た。ただ、足元は30m切れ落ちており油断はできない。灌木でセルフをとり後続を確保。今回最大?の核心を乗り越えた!ここからは滝上まえがけてしっかりとした踏み跡が草付に残っていた。まんまと利用し大滝を乗り越えた!と同時に安堵感で満たされる。ようやくこの迷路から脱出できるのだと・・・。

2段40m大滝は湯檜曽本谷の盟主たる風格

大滝を越えるとすぐに鉄塔巡視経路を発見!本日は時間の関係上こちらを利用してそそくさとエスケープ!尾根までほぼ直登の巡視経路になかばヘロヘロになりながら登り詰める。
詰め上がった?清水峠は素敵な場所。遠く谷川岳を望む。いや~1900mそこそこの山域とは思えないダイナミックな山並み。これだけでももう満足ですね。帰り道に選んだ旧国道291号線跡の登山道はひたすらに長く、たっぷりと水を含みきった、もはや重荷と貸したザックは肩に深く食い込み終盤には悲鳴をあげるほど。駐車場にたどり着くころにはヘロヘロクタクタ。肩が上がらん!

今回も随分とすり減りましたわ、ほんと。でもそれ以上に楽しかったな~!
沢自体は短い中にギュッと凝縮された秀逸な雪国の沢でした。まだまだ上越には良い沢がゴロゴロ。時間も体もたりね~な!

とりあえず備忘録を簡素に、率直にまとめておきます。


6:17 魚留滝ゴルジュ上 → 6:37ウナギ淵 →6:58十字峡 →8:42大滝 →9:53清水峠 →14:40駐車場

0 件のコメント: