2015年6月14日日曜日

小坂の滝 備忘録 椹谷中流部編 その1

小坂には3つの名渓があると思っている。それは濁河川本谷・兵衛谷・椹谷の3本。それぞれに特徴は異なり独自の世界観を醸し出している。その中でも椹谷は独特の陰険さとでもいおうか、人を寄せ付けないものがある。自分自身長年懸案事項に上がりながらもその陰険さゆえに繰越リストに残り続けてきた”宿題”だった。今回は意を決してその椹谷に足を踏み入れた。今回の遡行の目的は椹谷全域の空白地帯を埋める事。最下流には三ツ滝、中流部に回廊の滝、最上流には千畳の滝とういう小坂を代表する名瀑を擁する椹谷は兵衛谷には劣るものの”滝のデパート”のような谷だ。ただ濁河川や兵衛谷と比較して異質なのがその圧倒的な”威圧感”その威圧感は廊下の側壁の高さ、巨岩帯、エスケープルートの困難さなど遡行を行う上でプレッシャーとなりうる要素が多いためである。そんな陰険な沢に対して挑むメンバーはいつものK山氏&Y下氏。3人いればなんとかなるさ。さあ冒険の始まり始まり~。
陰険な廊下に希望の光を求めて

AM4時に道の駅へ集合。今回の旅の終着地点濁河温泉まで車を回すことから始める。6月も中旬になるとずいぶん日の出も早くなり道中御嶽山のモルゲンロートに期せづして遭遇する。これは幸先が良い。濁河回送後早々に元来た道を折り返し出発地点である椹谷林道のゲート前に着いたのはAM7時にほど近かった。出発準備を整えいざ出発。入渓点までは2kmの徒歩だ。1泊分の寝床や食料、登攀具などを背負い込んでいるため体が重く足取りは最初から重い。
ようやく入渓点にたどり着いた時には汗だく!まずは沢でクールダウン。ここからが本番だ。
入渓点は開けて明るい。でも巨岩ごろごろ(まだ小さい)
以前からこの入渓点から回廊の滝までは複数回遡行している。1か所を除いては・・・。
序盤から巨岩帯と重い荷物に悩まされる。ひとつひとつが「いちいちデカイ」岩は乗り越えるのが一苦労。時には10mサイズの転石もあり乗り越えるために高巻きを迫られる場面も多々あり体力も去る事ながら気力までも奪われる。延々とつづく巨岩帯にぶーぶー言いながらすすんでいくと関門の滝が姿を現した。この滝は秀麗で高い側壁の上から暗い廊下に朝日をあびて光のシャワーのように注ぎ込む滝である。写真では上手く納められなかったが一見の価値のある滝だ。関門の滝の名の通りこの滝のすぐ上流に本日最初の難関CS10m滝が眼前の景色をふさいでいるのが確認できた。前衛の5m小滝は泳いで這い上がれそうだが今回は高巻きを選択。左岸のルンゼより這い上がると明瞭な巻道があった。それを利用しCS10m滝に近づいてみるとその光景に息をのんだ。
CS滝の左岸は濡れた急なスラブ。クラックは走っているもののとても登れそうにもない。右岸に目をやるとルンゼからほっそーいバンドめがけてラインが見える。しかしその先は非常に危なそうな直登をしなければ安定したバンドには乗り込めそうもない。「これは無理やろ~」としばし3人で協議。もう少し高度を稼ぎ見えている高みのバンドへ上から懸垂下降で降りてはどうかという打開策を見出す。しかし現実は甘くなかった。今日用意している30mザイルでは到底降りられそうにない行程差、加えて立場すら安定しないガレ。この案は実行に移す前に却下された。残る選択肢はかなり下流にもどっての右岸の大高巻きかリスクを冒しての左岸の直登か・・・。これから待ち受ける中流部の難所を前にここで大高巻きに充てられる時間はない!ということで直登する事に。慎重にルンゼを下りとりつき地点から観察するとルートは約20m程度か。まじかで見ると確かに登れそうではある。リードでロープをのばし緊張の登攀。途中2個所のランニングビレーを取り慎重に登る。高度感はあるが問題の無いクライミングで難なくテラスへ到着。後続をビレーするために立ち木などのビレーポイントを探すが見つからない。「ボディービレーしかないか・・・。」と思って目線を落とすと目の前の岩壁にハンガーボルトを発見!やったーと思うと同時になんでこんな代物がここに・・・。そんな違和感を覚えた。しかしあるものはありがたく使わせて頂こう。これをアンカーに後続をトップロープで確保。荷揚げなども含めると30分を要した。その先しばらく巨岩CSゴルジュと化した谷底を横目にみながら巻いていくとほどなく与左衛門谷が合流、谷を見送りほどなく少し開けたところでひといき。まったく序盤から手こずらせてくれる。この先どれほどの困難が待ち受けているのか・・・。その時の僕には不安しかなかった。
迷宮の入口CS10m滝左岸の垂壁に活路を見出す

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