2016年10月18日火曜日

秋の山歩 ~南八ヶ岳編~

最近デスクワークな日々で気持ちは萎え、体もなまる一方。

そんな中での貴重なフリーな平日休み。そうだこんな日はあれだな・・・。”山歩”に出かけよう。

天気予報を見ているとどうやら10月中旬の割には気温も高めで3000m級でも雪の心配はなさそう。

てなわけで、今冬に行く予定の八ヶ岳・赤岳の偵察かねて行ってみよ~。








家から登山口の美濃戸までは3時間半。朝4時に起きてざっくり7時半には美濃戸を出発できる計算だ。

ただ、道間違えたり通勤ラッシュにはまったりで結局登山口の赤岳山荘に着いたのは9時ちょっと前。

でも天気も悪くないし最悪帰りはヘッデン下山でもいいやと割り切り歩き出す。

序盤からほぼ走るほどのハイペースで登るが、汗だくだく&息も切れ切れ。いや~運動不足がたたってます。

やっとの思いで行者小屋へ辿り着いた。時刻はまだ10時前。

「この分ならすべてのコースタイムは半分以下で行けるな~」と楽観視。

ただ硫黄岳まで縦走し赤岳鉱泉まで抜けるとしたら全行程で10時間以上必要。

高低差はあるものの距離的には15km弱やしなんとかなるっしょ。てなわけで再出発。



地蔵尾根の急登を経て赤岳の頂上に着いた時には11時。なんとか陽のあるうちに駐車場にはつけそうな時間。

ここからは稜線歩きだ。赤岳から硫黄岳までは岩場のアップダウンの繰り返し。ガスって眺望が効かない分、苦しいだけの修行的な縦走だ。

いつもそう。登りが苦手。足が上がらない。息もあがったまま戻らない。

いやもう登ること自体意味わからん。と、こころでブツブツ言いながらもムチ打って登り続ける。

もう登りは勘弁!というところで最後の硫黄岳の登りは緩やかながらしんどかった・・・。

休憩なしでノンストップ。乳酸たまりまくりの重い足。これでこそ良いトレーニング。といわんばかりに地味に追い込み続けた結果ヘロヘロ。

あとは赤岩の頭を経由し赤岳鉱泉までは下り道。いくら疲れていても下りは飛ばします。

ここはストックを出して駆け下りる。そろそろ膝がヤバイというところで赤岳鉱泉に到着した!

赤岳鉱泉の裏手ではアイスキャンディー(冬にはアイスクライミングに氷柱になる土台)の建設が進んでいた。

写真でみるよりずいぶん大規模。当たり前やけどすべて人力での作業。

みんな登山用のハーネス&ヘルメットてのがヤマヤらしくてうけた(笑)

後から知った事やけど皆さん山岳ガイドさんだったんですね。

赤岳鉱泉を後にして北沢をゆっくり下ることに。もう走れません・・・。勘弁してください、自分。

下山はいつも憂鬱。堰堤広場からは登山道も終わり林道歩きだ。でも期待をいい意味で裏切ってくれる光景が。

林道に入ってから周りの景色が一変。一面の苔と紅葉に癒される♪

疲れ果てたところに、このように癒され過ぎてはもう歩くのが嫌になりました。逆に。





今回は冬の山行の下見と称し急きょ南八ヶ岳へ。

当初は赤岳のみの偵察を考えていたものの、動き始めたら意外と行けそうだったので周遊しました。

お目当ての赤岳鉱泉のアイスキャンディーの骨組み建築も見えたし、八ヶ岳名物一面苔むした林にも癒されたな~。

ホームの御嶽と比較しやすい山だったので色々勉強になった山歩でした。

そして良いトレーニングになったわ。体バキバキ。これがたまらんのです。よし、また明日からがんばろう!

【行程】赤岳山荘(AM9時)-南沢経者小屋(AM10時)-地蔵尾根経由赤岳(AM11時)-赤岳~硫黄岳経由赤岳鉱泉(PM1時)-北沢経由赤岳山荘(PM2時20分) Total 5時間20分・15km 

2016年10月17日月曜日

【再考】小坂の瀧魂

僕の脳裏に”小坂の瀧”とい言葉が焼き付けられてきてから久しい。

今となっては当たり前のことになっているけども、いったいそれはいつのころからやったんや?

振り返ると、多分保育園の遠足の写真。真新しいがんだて公園のステージに腰かけている(当時まだ駐車場スペースは舗装されていなかったためステージとは20cmほどの段差があった)複数の園児と並んだ僕の姿。この時三ツ滝まで行ったのかは定かではない。そんな5歳。

初めて”小坂の瀧”という写真集の存在を知り読みふけった12歳。

暇つぶしと小遣い稼ぎのため、がんだて公園の売店で団子焼きのバイトをしてた15歳。(当時の滝見遊歩道は現在の茶色ではなく、緑色だったな)

幼いころ”やまのぼりのおじさん”に見せてもらったあのころ(推定6歳)の「ガッシャンガッシャン」は小坂の瀧写真集の素材を幻灯機のスライドショーで”魅せて”いたのだと気付いた18歳。

「国有林のあのゲートの向こう側が見たい!」という思いから「卒論の調査ならいけるんじゃね!?」と思いつき卒論テーマにかこつけてオフィシャルに入林許可申請を取得し思うがままにゲートの先の世界を行き来した21歳。

社会人になり、社会の波にもまれながらも、ふと見た中日新聞の記事の中に”NPO飛騨小坂200滝の設立”を知り「先を越された!」と思った23歳。

オヤジから、”禁断の領域”と言われ続けた小坂の魔境”兵衛谷”に足を踏み入れた25歳。

ついに、人生を”小坂の瀧”に捧げると決心した28歳。

そして、これほどまでにこの小坂の瀧を愛する人が他にも県外にもいるのだと知った33歳までの5年間。

写真集”小坂の瀧”と同い年。落合”御嶽橋”は誕生日も同じ”タメ”

常にどんなことでもできれば事の始末に責任はあまり負いたくはない。

でもこれだけは最後までやり抜きとおしたいと思った。

小坂の瀧とともに生きる。これだけは逃げない。突き進むのみ。

道などない。ただその先へ進め。





2016年10月10日月曜日

ちょっとそこまで秋の山歩でふと考える。の巻

雨続きの今秋。珍しく空いた休みの日、晴天予報に促されて久しぶりの稜線へ。

ちょっとしたアクシデントで負傷した足をかばって易しめの日帰り登山。

紅葉シーズンに多くの人で賑わうこの山。

ロープウェイを降りたったカールは思いのほか小さいけれど花崗岩の岩峰はなかなかの迫力。

実際に歩いてみると痛めた足には程よい行程。

岩稜歩きはわずかではあるけど程よい高度感で良いリハビリ&トレーニング。

山頂からは御嶽が良く見える。しばし黙とう。

立ち返って、ここもきっと冬にはそれなりに厳しい場所になるんだろう。

遭難の碑も稜線に立っているし、昨年だったかな韓国人の登山者が没している。なんでも紙一重。

今回もロープウェイでアクセスできて乗鞍や立山、西穂にも似た、非常に”手軽”な3000m級。

しかしそこはやはり高高度の世界。ひとたび狂うと人の命などろうそくの火よりはかなくか細い。

久しぶりのハイシーズンの登山のためか多くの登山者を目にする。

本当にいろんな登山者が山には居るのだな。そんなことを再認識させられた。

やはり山で人は死ぬ。たとえそれが噴火や落石のように不可避のものではなく

可避のものも含めて。今一度冷静に自分自身に問い直したい。人のふり見てわが身を正せ。

そういえばある人が言ってたな。「山に登る時、長い道中、幾度となく自問自答する。実はそれが大事なんだ。と仏法僧が教えてくれたよ。」

やっぱり山に行こう。たまには。気持ちや考え方を整理しに。

次は冬かな。さて、一休みはこの辺で。次にいきましょか!

八丁坂→木曽駒→宝剣→極楽平の稜線歩き。




2016年10月6日木曜日

2016.9.28-30谷川連峰・湯檜曽川本谷(峠沢まで)【記録集】

備忘録とは別に遡行記録を時系列に整理して残しておくことにしよう。

【初日】 雨予報通り終日雨。道の駅みなかみにて車泊

【2日目】 雨のち曇り予報。白毛門登山口を9:00に出発。常に雨に降られ湯檜曽川出合(魚留滝ゴルジュ上)にてビバーク

【3日目】湯檜曽川遡行、峠沢出会いより鉄塔巡視経路を利用し旧国道291号を下山。

今回の遡行は当初1泊2日で朝日岳まで抜ける予定でいたが雨の影響で遡行自体は1Dayとなった。

残念ではあったが秋の沢遠征初となる停滞の経験もこれもまた有意義。無駄なことなど一つも無い。

AM6:17 湯檜曽川本谷を魚留滝ゴルジュ上より遡行開始する
白樺沢出会
 平凡なゴーロ歩きを経て白樺沢出合。白樺沢の奥にはナメ滝が見える。
これより上流は本谷もナメ床が断続的に表れ美しい。ただ日の出前だけに水は冷たく寒い。
白樺沢を越えて最初の滝(2m程度)
谷は圧迫感の無いもののだんだんと狭まり滝が連続するようになる。小滝ばかりで登りやすいがスラブ滝が中心でスリップに注意が必要。
3段30m程度のナメ滝
6:31、3段30m滝に到着。こちらは右岸を胸までつかればへつってそのまま右岸を直登できるようだが朝一にそこまで濡れる気にもならず左岸より巻にかかる。最初は2mほどの段差をあがる場所で残置ハーケン&スリングあり。無くてもがんばれば登れる。草付を踏み跡通りに進むと楽に落ち口に出る事が出来る。
ウナギ淵入口
 6:37谷が大きく右に曲がるとウナギ淵を前衛にゴルジュがスタート。ウナギ淵自体は左岸を小巻に出来るがその後数百メートルは増水の影響もあってか腰以上の渡渉が幾度となく現れる。
ウナギ淵ゴルジュの屈曲部にある10m滝
 更に谷を進むと水流が左に直角に曲がる。ここに頓挫する10m滝は豪瀑で左壁を登り越える事が出来る。
ひょんぐり滝
 うなぎ淵を越えてもなお滝群は続く。上越の沢ではあたりまえかもしれないが中部圏では非常に珍しい、ひょんぐり滝が出迎えてくれる。この上でかの有名な十字峡(抱き返り沢・大倉沢出会い)
ゴルジュの奥になにやら滝が見える。
ウナギ淵から始まる長いゴルジュ帯は側壁が立っていないものの弱点は乏しく、まさにゴルジュ。
その終点には8mのチムニー滝がとん挫。腰までつかりながらゴルジュを前進。細かいスタンスではあるが問題なく滝上には降り立つことが出来た。
8m滝を巻き上がるの図
 谷は一瞬開けるがすぐに大滝が現れる。7:08抱き返り滝に到着。

増水の影響で2段目の登攀開始地点は激烈シャワーの中。ソッコーで左巻き決定。

1段目より大巻。途中のルンゼを詰めるも行き詰まりトラバース。激烈藪漕ぎで滝頭に出る。

抱き返り滝(2段20m)
抱き返り滝を越えると落差のある滝が連続する。10m3条は左のチムニーより巻く。
チムニーの最後にチョックストーンがあり乗り越すのが若干厄介。


AM7:46 七ツ小屋沢出合。本谷は曲り小滝をかけているので間違わない。

進んでいくと七ツ小屋沢に20mの滝が見える。間違えて登っても行き来できる。

いくつかの滝を越えていくと名物の10m滝にAM8:02に到着。

覚悟を決めレインのフードをかぶって滝身に取りつく。あとは瀑水を浴びながら滝の裏側のテラスを左上。左壁の登攀はホールド・スタンス豊富で登りやすい。
AM8:31赤茶けた岩質の2段滝に到着する。直登も可能だが右から入る枝沢より高巻く。
比較的大きく巻くが踏み跡は明瞭。落ち口に降りる際急傾斜なためスリップには注意が必要。
この滝を入口に大滝まではゴルジュ。途中深いヘツリもある。

AM8:42核心部の大滝(2段40m)に到着。狭いゴルジュ帯の中に鎮座する威風堂々たる風格に圧倒される。1段目は難なく登れる。2段目はテラスを少し下流側にトラバース。ぬめりが気になるが特に難しいところはない。確保視点やランニングも取りやすく確保した方が無難。あとは枝沢を登り落ち口めがけて続く草付の踏み跡をたどれば簡単に落ち口に立つことが出来た。

AM9:29峠の沢&鉄塔巡視路に合流し本日の遡行を終了した。
AM9:53清水峠へ到着しあとは旧国道291号を出発地点めがけて下るだけ。
PM14:30白毛門駐車場に到着。沢よりも登山道歩きの方が長い今回の日帰り遡行となった。


2016年10月1日土曜日

備忘録:上越・湯檜曽川本谷遡行の巻

秋雨前線のクソヤロー!と毎日叫び続けています。でもその声は彼には届かないようです。
でもね、秋遠征に行くタイミングはここしかないって踏んだんです。
だから行ってきました!雨の中、遠き群馬はみなかみの山奥、湯檜曽川本谷まで。
今回も学び多き旅となったことを感謝してます。そんな旅路を備忘録にまとめておきましょう。


やっぱ沢は晴れの日だよね~

例年好天率の高い9月末。ところが今年”荒天”率が高く、出発直前まで今回の遠征を辞めるか否か、天気予報に一喜一憂しながら苦心していました。しかし天気図の動きを見る限り前線は南下し大陸から次第に高気圧が覆うという日が1日だけある。これにかけよう!ということで小坂を出発した。今回はいつもの貝山氏は残念ながら不参加となりヤマピと僕の二人旅。登攀特攻隊長を欠き向かう谷には登攀要素の強い個所が多々・・・。いやはやどうなることやら。


大地の裂け目に滝が落ちる。吹割滝
初日は移動だけなので群馬観光♪ヤマピが探してきた観光地・吹割の滝を夕闇&驟雨の中観瀑。帰りに沼田とんかつ街道なるエリアを発見し”ゆき藤”なる名店?でかつ丼を食す。そのままみなかみまで移動し、しなびた地元の温泉に入り道の駅で就寝。
翌日は朝6時に行動開始。結局雨予報にもかかわらず夜の内雨は降っておらず、朝も空は重たいものの雨ではない。「これっていけるんじゃない?」ということで出発準備。
白毛門駐車場に車を回し早速沢装備を身に着け出発。しかし出発と同時に霧雨が降り始める!好天予報を信じなおも進行するも雨は止まず虹芝寮まで来たところでついに雨に負けて停滞。
結局そのままぼーっと雨がやむのを2時間待ち続けたのであった。
しかしここまで来て引き返すのもおっくう雨がやむのを期待し、ビバークできそうなとこまで行くことに。
出発したものの雨は一向にやまない。それどころか強くなる一方。登山道を横切る沢は増水しルートが分からない個所も。ただ渡渉できないほどではなくずんずん進む。武能沢を過ぎいよいよ湯檜曽川への下降ルートへ。ただこの降雨状況では谷の増水は必須。魚留滝ゴルジュは巻く事に。良く踏まれた踏み跡を進むとゴルジュ上にピタリと出た。増水し、雨の降りやまぬ谷を遡るもビバーク適地は見つからず、巻道と谷の出合まで戻りここでビバーク。ツエルトをタープ代わりに張りその下で質素な晩酌と夕食を済ます。たき火の無い夜は間が持たず日も暮れる前に就寝。ただただ明日の好天を祈るばかり・・・。
今回の遡行は雨具が標準!

朝起きた時点で減水していなければ撤退と決め込み朝4時起床。ただ真っ暗で見えない。
テントから這い出し冷たい沢靴に足を通す、「はう!」快感です。やめられませんねコレ。
5時を過ぎるとようやく白みかけそこから30分ほどでようやく全貌が明らかになった。
昨日までの濁りはとれている。そして明らかに減水している。よし、これならいけるということで出発!昨夜の雨で装備はぜんぶビショビショ。てなわけでしょっぱなから寒いので雨具を着こんでの遡行開始です。

入渓からほどなく白樺沢出合を過ぎると本日最初の3m滝。簡単に巻き越える事はできるもののスラブ滝は水線際の直登は難しそう。遡行していくと行く手をふさぐ5m滝を前衛に奥行きを持って3段30m程度の滝が現れる。ここは左岸を一段上がりテラスから3段まとめて巻き上がる。やはり草付には踏み跡がしっかりと残り人気の沢だという事が良くわかる。しかし見上げるとすり鉢の底のような地形。灌木はあるものの高い立木は皆無。きっと雪のせいなのだろう。急なスラブにどこまでも続く草付。これが上越の沢か~!僕たちの兵衛谷とは様相が全く異なるその”異空間”に感動を覚えずにはいられなかった。



3段30mのナメ滝は右から。(左は胸までつかればへつれる)

ようやく”沢登”っぽくなってきた!2日まってようやく辿りついた沢にテンションは上がる。
そして谷が右にぐいっと曲がったところで、出ましたウナギ淵!超メジャー級の光景を目の前にしてもはや観光気分です。ただ、観光気分でいられたのもここまで。
ウナギ淵は想像以上に小さく短い。しかしそれは”深い部分は”の話。真のウナギ淵とはその先まで続いていたのだ。左岸を小巻して沢床に降り立つとそこはまさにゴルジュ。側壁は低く威圧感は無いものの逃げ場もない。時にはまた下まで水に浸かる渡渉に、やはり水量の多さを感じざるを得なかった。「いや~こんなの聞いてないよ!」ってなノリで不安を募らせ進んでいくと水深はだんだん深くなり仕舞には腰までつかる羽目に!この時期、しかもまだ日がさす前の早朝にこのヘツリは堪えます!もはや足はジンジン。手はかじかみしびれてます。

ウナギ淵ゴルジュのはじまりはじまり~

ウナギはどこまでも続くよ♪
ウナギ淵を入口にしてここからは圧迫感の無いもののしっかりとしたゴルジュ帯に変容した。
増水のせいなのかやたら水深が深い。腰を越える渡渉やヘツリを強いられ、早朝の体には堪える。這い上がるたびに足のしびれが激しい。この先が思いやられる・・・。すると淵がぐいっと曲その出口には10m滝が控えていた。登れる代物ではないので左壁を巻気味に登る。
その後もなおもゴルジュは続く。やはり腰上まで水に浸かる個所が何カ所かあり、泳いだ方がむしろいいのではと錯覚するほどの場所もあり。はやくも「もう勘弁して~」という感じ。ヤマピと顔を見合わせ「ここは夏にくるべきやな!」って後悔既に時遅し・・・。

ウナギ淵出口の10m滝は左壁から

なんのかんの言っても前に進むほか僕らがここから”脱出”する術は無く、前進あるのみ。谷幅がさらに狭まりゴルジュの中に10m弱の斜瀑が見えている。右岸のバンドに這い上がり細かいスタンスを慎重に拾いながら登りきる。これはこの一手(歩)が無いとキツイというところに必ずホールド・スタンスがあるものの、もしなければ全く取りつく島の無い代物ばかりだな~というのが序盤の印象。
随分体もひえっひえになりましたところでゴルジュの終わりを思わせる大空間に躍り出た!

細かいスタンスはぬめりもあり慎重に拾う
ここで噂のグランドクロスキャニオン(十字峡)!本谷はぐいっと左に曲り、正面からは抱き返り沢、右奥からは大蔵沢がいっきょに出会うまさに十字峡。ただ、いざその場所に立つと意外と十字な感じが感じ取れないのが残念・・・。そんなことはさておき、十字峡から間もなく抱き返り滝(2段20m)が行く手を阻む。一見して、「うん、高巻こう!」二人の見解は一致しました。みるからにドバドバ増水の水線を冷え切った体で乗り越える事は至難の業、そう本能的に判断しました。
ただ、この巻、かな~り渋かった!一段目右岸より巻き始めるが積雪の影響で谷側に倒れこんだブッシュがとにかく歩きにくい!踏み跡はあるもののブッシュに阻まれ見失う。途中に現れたルンゼを登り適当なところでトラバース、しかしこれまた悪い!ブッシュの切れ間に滑ったスラブ。ここを越えるのが超怖い!確保といえばブッシュのみ。束でつかんで見えない足元になかばごまかし交えてけりこむ。何度もスリップするがブッシュのおかげでなんとか保持。そんな気の抜けない激藪漕ぎトラバースをひたすら続ける。なんとか滝上にたどり着いた時の安堵感と言ったら!緊張と体の冷えからか指先はかじかみ、しびれもある。いや~雪国の沢の高巻きをなめていましたわ。こんなんなら水線際の直登ラインの方が優しかったのでは・・・。またもや後悔先に立たず。でした。

抱き返り滝(2段20m)


ここからはだんだんと滝も大味になってくる。一気に高度を上げていくような印象。3条10mチムニー滝もなんだか2条っぽい、やっぱ増水の影響なのかな。こちらは右岸のチムニーから巻き上がるが詰め上がりのチョックストーンがちょっとやらしい。その後も歩みを進めるとカンテから巻き上がる8m滝などを越え、眼前に10m滝が現れる。これが噂に聞く滝の裏のテラスを滝に打たれながら横切るいわゆる”名所”だな!ひとりテンションを上げる。振り返るとヤマピはずいぶん遅れている。しばらく待つも追いついてこないのでとりあえず偵察兼ねて滝に取りついて見る。やはり前情報の通り、取りついて見ると見事にテラスが横切っているじゃないですか!その瞬間にスイッチオン!レインのフードをかぶりいざ!テラスへ這い上がると予想通りぬめぬめ。飛沫を背中にうけながら四つん這いに近い格好で潜り抜ける。水勢は思いのほか強くはなく難なく渡りきる。ここからは多少立ってはいるもののスタンス・ホールドともに豊富で快適に直登できる♪ただ高度感はなかなかなので緊張はするけどね。後続は念のため確保した。ここでこの谷初めてロープを出した。
水流中の左上するバンドを伝い左壁を直登
ここらあたりから岩質ががらっと代わり赤茶けた岩が現れだす。続いてこちらも名物の赤茶けた岩質の2段20m滝。直登もできるようだが大滝を前に気力温存。ここは左岸の巻道を利用し滝上に簡単に降り立つ。とはいえ雪国の沢特有のドロドロ草付はスリップの注意に余念がない。ゴルジュはなおも深まり途中胸までつかり巻き上がる。ほんとにがっつり濡れる沢です。レインが手放せない!側壁はだんだんと立ってきて、いよいよという雰囲気になってきた。そして谷がグイッと曲がったその先にそれは突如として現れたのだ。湯檜曽川本谷一の大滝2段40m滝。一見すると「50m以上あるっしょ!」というモンスター級の滝。これ登れんでしょうというような威圧感。正直脱力しました。「ここで撤退したら30mロープ1本じゃ帰れないかも・・・。」なんてネガティブにもなりました。
でもねやっぱ行くしかないんですよね。無事に帰るためには。


2段20mは左岸を大巻。踏み跡明瞭。
さて、深呼吸。その威圧感に圧倒されながらも自分を律して大滝と対峙する。
四方八方から降り注ぐ水流が行く手を阻むがステップはしっかりとしているし、ぬめりも気にならない。取りついてみて初めて「行けるかも!」1段目を登り切り2段目はくの字に大きく曲がっている。水線際の突破はほぼ不可能。活路を見出すべくオブザベーション。
すると少し枝沢が目に入る。ここにあがるのがどうやらセオリーらしい。目をやるとうまくバンドが続いている。ただぬめりが怖い。じわりじわりと慎重にトラバースすると特に難しい個所もなく難なく灌木帯まで抜ける事が出来た。ただ、足元は30m切れ落ちており油断はできない。灌木でセルフをとり後続を確保。今回最大?の核心を乗り越えた!ここからは滝上まえがけてしっかりとした踏み跡が草付に残っていた。まんまと利用し大滝を乗り越えた!と同時に安堵感で満たされる。ようやくこの迷路から脱出できるのだと・・・。

2段40m大滝は湯檜曽本谷の盟主たる風格

大滝を越えるとすぐに鉄塔巡視経路を発見!本日は時間の関係上こちらを利用してそそくさとエスケープ!尾根までほぼ直登の巡視経路になかばヘロヘロになりながら登り詰める。
詰め上がった?清水峠は素敵な場所。遠く谷川岳を望む。いや~1900mそこそこの山域とは思えないダイナミックな山並み。これだけでももう満足ですね。帰り道に選んだ旧国道291号線跡の登山道はひたすらに長く、たっぷりと水を含みきった、もはや重荷と貸したザックは肩に深く食い込み終盤には悲鳴をあげるほど。駐車場にたどり着くころにはヘロヘロクタクタ。肩が上がらん!

今回も随分とすり減りましたわ、ほんと。でもそれ以上に楽しかったな~!
沢自体は短い中にギュッと凝縮された秀逸な雪国の沢でした。まだまだ上越には良い沢がゴロゴロ。時間も体もたりね~な!

とりあえず備忘録を簡素に、率直にまとめておきます。


6:17 魚留滝ゴルジュ上 → 6:37ウナギ淵 →6:58十字峡 →8:42大滝 →9:53清水峠 →14:40駐車場